
繰上げ受給した場合の主な影響やデメリット
繰上げ受給した場合の影響で最も大きいのは、繰上げ期間に応じて年金額が減額されることです。これは周知のこととして、その他の主な影響やデメリットを確認してみましょう。
(1)一度繰上げ受給の請求をすると、取り消しや変更はできない。
繰上げ受給の年金額が決定すると、減額した年金額が一生涯続くことになります。それを取り消すことや変更することはできません。
(2)老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰上げ請求する必要がある。
繰上げ請求は同時に行う必要があります。逆に繰下げ請求は、老齢基礎年金と老齢厚生年金で別々に請求することができます。
(3)国民年金の任意加入や、保険料の追納ができなくなる。
任意加入とは、60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や40年間の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合などで年金額の増額を希望するときに、60歳以降65歳未満の期間に加入する制度です。
追納は、国民年金の免除等の承認を受けた期間の保険料について、後から納付(追納)する制度です。繰上げ請求するとこれらの制度を利用することができなくなります。
(4)働きながら繰上げ受給する場合には在職老齢年金として減額となる場合がある。
2026年4月の改正では、賃金と老齢厚生年金の合計額が月額65万円を超える場合に、老齢厚生年金の一部減額(支給停止)となります。
(5)障害基礎年金や遺族年金などを受給できなくなる場合がある。
老齢年金を繰上げ請求すると、その時点で老齢基礎年金の受給権が発生するため、繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害基礎年金・障害厚生年金の請求ができなくなります。
また、タイトルの事例は夫婦が存命なので該当しませんが、遺族年金の受給についても影響を及ぼす場合があり、65歳になるまでの間は、繰上げ請求した老齢年金と遺族厚生年金などのいずれかを選択することになります。
(6)加給年金の受給は65歳からのため、繰上げ受給することはできない。
夫の厚生年金の加入期間が20年以上あり、専業主婦(妻)が65歳未満であれば、夫の65歳以降の老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。同様に、18歳到達年度の末日までの子(20歳未満で障害等級1級・2級の子)の分の加給年金を受給することができます。
ただし、加給年金は夫の65歳以降の老齢厚生年金に加算されるため、繰上げした期間には加算されません。
(7)iDeCoに加入できなくなる。
繰上げ請求した方は、iDeCoに加入できなくなります。また、iDeCoの老齢給付金を受給した方も同様です。
ちなみに、iDeCoに加入している国民年金第2号被保険者の方が、60歳以降も働き続け引き続き国民年金第2号被保険者であれば、継続してiDeCo加入者となることができます。
まとめ
前述のとおり、公的年金について夫が繰上げ受給を請求することで、自動的に妻の年金額が減額されるなどの影響を及ぼすことはなく、世帯全体の年金額に直接影響は及びません。妻は、ご自身の年金を受給するタイミングを自由に選択し、受け取ることができます。
ただし、この事例のように妻が専業主婦の場合、世帯全体の年金額の最も多くを占める部分は、夫の老齢厚生年金の金額となるでしょう。
この金額は、夫の在職老齢年金や加給年金の加算額などの影響が大きいため、それぞれの状況を踏まえ、ある程度のシミュレーションをしておくべきでしょう。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
