
老齢厚生年金を繰り下げている間は、加給年金も支給されない
日本年金機構は、年金の繰下げ受給について、加給年金額や振替加算額は増額の対象にならず、繰下げ待機期間中は受け取ることができないと案内しています。つまり、老齢厚生年金を70歳まで5年間繰り下げた場合、その待機期間中に本来加給年金の対象となる配偶者がいても、加給年金は支給されません。
ここで重要なのは、「支給をいったん保留して後でまとめて払う」という扱いではないことです。繰下げを選んだ期間について、加給年金5年分が別に積み立てられているわけではありません。
繰下げを始めた年金を受け取り始めても、過去5年分の加給年金が上乗せされるわけではない
たとえば65歳から70歳まで老齢厚生年金を繰り下げ、70歳から増額された老齢厚生年金を受け取り始めたとします。この場合、繰下げによる増額率は老齢厚生年金の本体部分にかかりますが、加給年金額は増額計算の対象から除かれます。
そのため、「70歳から年金を受け取り始めれば、65歳から70歳まで受け取れなかった加給年金もまとめてもらえる」という仕組みではありません。配偶者が加給年金の対象年齢を過ぎていれば、受給開始後に加給年金そのものを受け取れないこともあります。
一方で「繰下げ請求をせず、本来の年金をさかのぼって請求する」選択肢はある
年金をまだ請求していない人は、実際に請求する際に繰下げ申出をせず、65歳時点の本来の年金をさかのぼって請求する選択肢もあります。ただし、請求時期や年齢によっては時効や「繰下げみなし増額制度」などが関係し、単純に何年分でもさかのぼれるわけではありません。
また、本来の年金をさかのぼって請求する場合の加給年金の扱いは、配偶者の年齢や生計維持関係、厚生年金の加入期間など個別条件によって確認が必要です。「繰下げをやめれば必ず5年分の加給年金が戻る」と考えず、請求前に年金事務所で試算してもらうのが安全です。
加給年金がある人ほど、繰下げは「本体の増額率」だけで判断しない
老齢厚生年金は1ヶ月繰り下げるごとに0.7%増え、原則75歳まで繰り下げることができます。しかし、加給年金は繰下げによる増額対象外であり、待機期間中も支給されません。配偶者が65歳未満など加給年金を受けられる可能性がある家庭では、繰下げによって受け取れなくなる加給年金額も含めて比較する必要があります。
単純に「繰下げれば年金が42%、84%と増えるから得」と考えるのではなく、加給年金を何年間受けられる予定なのか、税金や社会保険料への影響はどうかも含めて判断しましょう。
まとめ
老齢厚生年金を繰り下げている間は、加給年金額を受け取ることができません。さらに、加給年金額自体は繰下げによる増額の対象外です。そのため、繰下げをやめて増額後の老齢厚生年金を受け取り始めても、待機していた5年間の加給年金が自動的にまとめて支払われるわけではありません。
請求方法によっては65歳時点の本来の年金をさかのぼって請求する選択肢もありますが、時効や個別の受給要件が関係します。加給年金の対象となる配偶者がいる場合は、繰下げ前だけでなく、請求方法を決める時点でも年金事務所に確認することが大切です。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 老齢厚生年金を繰下げ請求した場合、どのくらい増額して受給できるのですか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
