再生医療品質基準協議会は、2026年9月3日付で「監査証跡保全基準(JRQ-P-001)」を制定し、同日施行しました。本基準が対象とするのは、電子記録の最終値だけではありません。記録が作られ、変更され、削除され、再処理され、承認された過程を原記録と結び付け、品質判断まで遡れる状態にすることです。 ## 「誰が操作したか」を失わない 共有識別子や、通常業務での特権アカウントの常用は、操作の帰属を曖昧にします。本基準は、システム管理、記録入力、工程承認、証跡レビューの責任を定め、権限表と利用者台帳、付与・変更・失効の記録を照合するよう求めます。退職や異動、委託終了後に不要な権限が残っていないかも確認対象です。 ## 時刻差が履歴の順序を変える 複数の装置やシステムをまたぐ工程では、時計のずれが操作の前後関係を不明確にします。重要記録の生成から保存終了まで監査証跡を有効にし、任意に停止・上書きできない設定とすることに加え、時刻同期ログ、設定記録、機能試験記録によって時間軸を確かめます。 訂正や再解析が存在すること自体を直ちに問題とはしません。重要なのは、変更前後の内容、理由、実行者、承認者が残り、失敗操作や欠番、結果の無効化を含めて説明できることです。都合のよい結果だけを選んでいないか、試験一覧や連番との照合が必要になります。 ## ロット判定前のレビュー 証跡レビューは、保存後に形式的に行う作業ではありません。品質への影響を踏まえて対象と時点を定め、重要工程についてはロット判定前に完了させます。レビュー票には対象期間、システム、例外、調査番号、未解決事項を記し、ロット記録から相互参照できる状態にします。 また、証跡は検索・閲覧できる形式で原記録と一体的に保存しなければなりません。バックアップの有無だけでなく、システム更新や媒体移行の後にも内容を読み、意味を再構成できるかが焦点です。読取り試験と復元試験は、保管という行為を実際の利用可能性へつなげます。 ## 適合判断で確認する証拠 全要求事項について責任、手順、記録、判定の証拠がそろい、重要な証跡を復元できる場合を適合とします。一部に不足があっても、影響評価を伴う是正計画が管理されていれば一部適合となり得ます。一方、証跡機能の無管理な停止、共有識別子による帰属不能、説明のない変更、重要記録の復元不能は不適合の判断につながります。 本協議会は申請に基づき、対象システム一覧、設定記録、抽出した証跡、是正追跡の整合性を確認します。監査証跡は単なる操作ログではなく、判断の来歴を説明可能にする品質記録です。 点検対象を決める際には、記録が後から変更できるか、変更がロット判断へ及ぶか、例外操作が日常的に発生するかを考慮します。全ログを同じ深さで眺めるのではなく、重要性に応じたレビュー範囲を手順として説明できることが求められます。
■基準全文(協会公式サイト)
JRQ-P-001:https://jrq.or.jp/standards/jrq-p-001/
■発行元
再生医療品質基準協議会
公式サイト:https://jrq.pages.dev ※本資料は品質・表示に関する情報提供であり、効果効能を保証するものではありません。
配信元企業:一般社団法人再生医療品質基準協議会
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