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厚労省「大麻検討会」で全く語られていない「禁止主義の「科学」の政治的利用:大麻とサイケデリックの場合」の和訳資料を公開


2020年8月に発行された“The political uses of prohibitionist “science:” The case of cannabis and psychedelics,”の仮訳版です。日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、当学会WEBサイトにて、仮訳版を6月14日付けで公表した。大麻の禁止の歴史的背景がわかる基礎資料としてご利用いただければと思います。

論文の概要
この論文では、大麻とサイケデリックのケースを分析し、禁止主義がいかに自らの政治的・道徳的なアジェンダ(行動計画)を隠すために「科学」に頼り、自らの優先順位に合わない科学的研究の結果を無視してきたかを分析しています。

大麻の規制と科学の歴史概要

人類最初~1700年代までレッセフェール(無干渉・自由放任)

1800年代 医師と宗教家によりアルコール依存は、意志の慢性疾患であるというモデルを推進

1900年代のアメリカ

中国人はアヘン
メキシコ人はマリファナ(大麻)
アフリカ系アメリカ人はコカイン
アイルランド系カトリック移民は蒸留酒
→ 薬物の消費は貧しい移民のグループと結びつけられていた。

薬物消費者は、罪人、精神障害者、殺人者と関連づけられて、禁止主義が社会的な統制装置となった。
→ これは明らかに民族差別的で、人種差別に基づいていた。

1950年代以降

禁止主義のモデルは、医薬品推進運動、医学界と製薬業界の台頭と覇権、薬物を専門とする強力な官僚組織の設立を中心とした政治的統制の利益が融合して生まれた。

道徳的な禁止主義という新しい文化的イメージが発展。
薬物使用者に対する嫌悪感を世界政治にまで高めることに成功。

科学的根拠のない報告書によって、1961年麻薬単一条約、1971年向精神薬条約の制定

1971年のニクソン大統領による「麻薬戦争」。
その裏付けに、大麻使用と学業不振の関連性があるという研究を推進。
マスメディアによって、大麻使用はいけないものというイメージが定着。

後に48本の研究レビューでは、大麻使用と学業不振に因果関係ないと結論。

禁止主義の科学は、「あらゆる大麻使用は問題を引き起こす」「いかなる場合も治療効果のある物質ではない」という政治的な前提を支える知識を作り上げることに努めてきた。

この矛盾はすでに50年以上も続けられている。

結論

禁止主義には、各国の刑法を介して押し付けられること、国際関係の軍事化が共通する。

科学的根拠よりも、社会に存在する力関係で、薬物政策が決まる。

薬物政策は、科学的根拠、公衆衛生、社会的つながり、人権などの価値観に基づくべきである。

【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000238378&id=bodyimage1

図1 青系「問題のない薬物使用者」9割と赤系「問題のある薬物使用者」1割
過去1年間に違法薬物を使った2億4700万人のうち、物質使用症を持つ人が2900万人:11.7%、そのうち治療を受けている人はわずかに6分の1だけ。

薬物使用者は、心身共に健康に問題のないコントロールユーザーがほとんどです。
禁止主義は、問題のない薬物使用者の9割を逮捕、勾留、有罪にして、スティグマ(負の烙印)化と社会的排除を行い、問題のある薬物使用者の1割に、治療・回復の支援の手を届きにくいものにすると指摘されています。
図の引用:World Drug Report 2016 国連薬物犯罪事務所(UNODC)


禁止主義の「科学」の政治的利用:大麻とサイケデリックの場合
PDFダウンロードのサイトはこちら
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=114136

原文
The political uses of prohibitionist “science:” The case of cannabis and psychedelics, Salud Colect. 2020.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33147387/


本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。


日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会;International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。



配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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