代表弁護士 井上 昌哉
内閣府「平成29年版高齢社会白書」によると、2012年は認知症患者数が約460万人、高齢者人口の15%という割合だったものが、2025年には5人に1人、20%が認知症になるという推計が出ています(※1)。
弁護士法人しまかぜ法律事務所では、交通事故について情報提供するとともに、ご遺族や交通事故の被害に遭った方が適正な賠償額で解決ができるよう全面的にサポートしてまいります。
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※1 出典:内閣府「平成29年版高齢社会白書」より
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/29pdf_index.html
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/365253/LL_img_365253_1.jpg
代表弁護士 井上 昌哉
■認知症とは
認知症とは、何らかの病気や障害などの様々な原因によって、記憶や判断などを行う脳の機能(認知機能)が低下し、日常生活や仕事に支障をきたすようになった状態のことをいいます。一般的には高齢者に多い病気といわれていますが、年齢に関わらず発症する可能性があります。
では、認知症の方が交通事故を起こしたらどうなるのでしょうか。
■認知症患者が加害者の場合
1 被害者に対する補償
加害者が認知症であっても、加害者が任意保険に加入していれば、被害者に対する対人対物保険は使用できますので、治療費、慰謝料、修理費などすべて補償されます。
任意保険が切れていた場合、任意保険の対象者が認知症患者を含んでいない場合は、任意保険は対象外となりますので、自賠責保険の範囲内で補償されます。
自賠責保険は、加害者本人だけでなく、車の所有者も責任を負いますので、車の所有者が息子であった場合、運行供用者責任として息子も責任を負います(自賠法3条)。被害者の症状にもよりますが、後遺障害が認定されるような大事故の場合は、何千万円という賠償責任を車の所有者である息子が負担することになります。
運行供用者責任(自賠法3条)を回避するには、
(1)自己(運行供用者)及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
(2)「被害者」又は「運転者以外の第三者」に故意又は過失があったこと
(3)自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと
を証明する必要があります。
責任無能力者の責任を否定する民法713条は、運行供用者責任には適用されませんので(東京地裁平成25年3月7日判決)、仮に、加害者が認知症患者で責任能力がないと認定されても、加害者側が上の免責3要件を立証できない限り、運行供用者責任(自賠法3条)を免れることはできません。
2 加害者自身に対する補償
認知症である自分に対する人身傷害保険(自分の治療費や慰謝料など)、車両保険(自分の車の修理費)は、認知症の症状や保険会社によって対応が異なりますが、補償されない可能性が高いです。
まず、約款に、保険金を支払わない場合として、「被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失によって生じた損害」と記載されている場合は、補償されません。
もし、上記の内容が記載されていなくても、「故意または重大な過失がある場合」は保険金を支払わないという内容が適用され、補償されない場合があります。これは、認知症の診断を受けていて、誰が見ても運転したら危険性だとわかる状態なのに運転をして事故を起こしたのは、「重大な過失」と考えられるためです。
3 過失割合
認知症の程度によっては、事故状況の確認が難しく、事故の目撃者がいない場合は、示談による解決が難しくなることもあります。
適正な過失割合で事故の解決をするには、ドライブレコーダーや事故現場周辺の防犯カメラ、事故の現場図等を分析し、正確な事故態様を明らかにする必要があります。
賠償額が大きくなればなるほど、過失割合がたとえ1割の違いであっても、受け取れる金額が大きく変わってきますので、適正な過失割合で事故の解決をすることが大切です。
■事故がきっかけで被害者が認知症(高次脳機能障害)になった場合
交通事故によって脳が損傷することで、認知症(高次脳機能障害)を発症することがあります。認知症と高次脳機能障害は症状が似ているため、認知症なのか、高次脳機能障害なのか、もしくは、認知症と高次脳機能障害を併発しているのか、医療機関で正確な診断を受ける必要があります。
後遺障害が認定されれば、後遺障害慰謝料、逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など、交通事故によって失われた利益のこと)を請求できます。
高次脳機能障害の後遺障害は、症状に応じて1級~9級が認定されますが、後遺障害慰謝料は、1級(常に介護を要するもの)で2800万円、9級(労務が相当な程度に制限されるもの)で690万円となります。
逸失利益は、被害者の年収や年齢によって異なってきます。特に、事故前年の年収が高い方、就労可能年数(67歳)までの年数が長い方の逸失利益は高額となります。
逸失利益は、一般的に、賠償項目でもっとも高額となりますので、適正な算定方法で算定することが大切です。
■事務所概要
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