「一般健診等との同時実施」パターンの実施イメージ
「地域・職域連携による歯周病疾患検診等」パターンの実施イメージ
「歯周病リスク検査キットの配布」パターンの実施イメージ
モデル事業の結果(性別・年代別)
モデル事業では、地方自治体・事業所・保険者の実施しやすさ、市民・従業員の参加しやすさ、口腔ケアのチェックによる高リスク者の歯科受診率向上については良い傾向が得られましたが、口腔への低関心・無関心層の参加、セルフケアの定着等に関しては課題が残る結果となりました。令和4年度のモデル事業における課題を踏まえて、令和5年度も厚生労働省事業「就労世代の歯科健康診査等推進事業に係る調査研究等一式」において、モデル事業を実施する予定です。
また、事業説明会は2023年6月22日(木)に実施いたします。
■背景
国民誰もが、より長く、元気に活躍できて、全ての世代が安心できる「全世代型社会保障」を実現するためには、予防・健康づくりを強化し、健康寿命の延伸を図ることが求められています。口腔の健康の保持・増進を図ることは、健康寿命の延伸を図る上で重要であり、特に歯周病については、糖尿病患者は深い歯周ポケットを有している※1など、歯周病と糖尿病・認知症等の全身疾患との関連が示されており、口腔の健康と全身の健康の関連性が注目されていますが、歯周病り患率※2が依然として高い状況にあるといった指摘があります。
こうした中、「経済財政運営と改革の基本方針2022」において、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討等の歯科口腔保健の強化が盛り込まれています。また、「成長戦略フォローアップ」においても、全身の健康にもつながる歯周病などの歯科疾患対策を強化するため、現在自治体において10歳刻みで行われている歯周疾患検診の機会を拡大し、歯科の保健指導を充実する旨が記載されております。しかし、現行の制度における歯周疾患検診は実施率が約79%、受診率の全国平均は約5%と低く、職域においては法定の歯科健診は一部有害な業務等に従事する者に義務づけられている特殊健康診査のみで、多くは保険者や事業主の努力義務のみで歯科健診機会がないなどといった課題が指摘されています。
そこで、NTTデータ経営研究所は令和4年度、厚生労働省から受託した「歯科健康診査推進事業に係る調査研究等一式」において、地方自治体や事業所・保険者における歯科健診等の実施促進を図るための、効率的・効果的な歯科健診・歯科保健指導の検討を、全国の市町村・職域においてモデル事業を実施しました。以下では職域(事業所・保険者)で実施したモデル事業の結果について報告します。
■モデル事業の概要
モデル事業は、職域を通じた歯や歯ぐきの健康状態を確認する機会を拡大することを目的として、「事業所が実施可能な運用パターンの創出」「個人の行動変容に効果的な介入方法の探索」の2点を軸として事業を進めました。
実施方法としては、「一般健診※3等との同時実施」「地域・職域連携による歯周疾患検診等」「歯周病リスク検査キット※4の配布」の3つのパターンを用意し、各事業所のニーズに応じたパターンを実施しました。どのパターンにおいても、参加者には実施前と実施1ヵ月後にアンケートを実施し、事業所の担当者にはアンケート・ヒアリングを実施しました。
1. 一般健診等との同時実施
希望する従業員に、一般健診等の会場で歯周病リスク検査を実施し、その場で検査結果を説明、あるいは歯周病リスク検査キットを配布し、後日自宅に検査結果を郵送しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/358265/LL_img_358265_1.jpg
「一般健診等との同時実施」パターンの実施イメージ
2. 地域・職域連携による歯周病疾患検診等
希望する従業員に、歯周病リスク検査を郵送し、その従業員は各自の自宅で検体を採取し、検査機関に返送しました。その後、郵送にて検査結果を受領しました。また、事業所が所在する自治体の歯周疾患検診等の案内も同時に発出し、希望者は歯周疾患検診などを受診しました。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/358265/LL_img_358265_2.jpg
「地域・職域連携による歯周病疾患検診等」パターンの実施イメージ
3. 歯周病リスク検査キットの配布
希望する従業員に、歯周病リスク検査キットを郵送し、従業員は各自の自宅で検体を採取し、検査機関に返送しました。その後、郵送にて検査結果を受領しました。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/358265/LL_img_358265_3.jpg
「歯周病リスク検査キットの配布」パターンの実施イメージ
■モデル事業の結果
モデル事業には、保険者を含む様々な職種(製造、食品、衣料、IT等)の94社、延べ2,889人が参加しました。性別では男性が約60%と多く、年代別では40代をボリューム層として様々な年代の方々が参加しました。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/358265/LL_img_358265_4.jpg
モデル事業の結果(性別・年代別)
また、モデル事業参加者のうち約90%は口腔ケアへの関心について「とても関心がある」「関心がある」と回答していることから、主に関心層がモデル事業に参加したと言えますが、過去1年以内の受診状況を見ると、受診者は約53%に留まることから、「関心はあるものの受診行動には至っていない」方も一定数参加されたと考えられました。
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/358265/LL_img_358265_5.jpg
モデル事業の結果(口腔ケアへの関心・過去1年以内の受診状況)
モデル事業の参加により、新規で歯科医院を受診したのは全体の9.8%に上りました(定期受診以外で元々歯科受診を予定しておらずに歯科受診)。また、モデル事業参加後のリスク別の歯科医院受診状況を見ると、歯周病リスク検査の結果が低リスクよりも高リスクである方が、歯科医院受診率が高い傾向が見られました。
画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/358265/LL_img_358265_6.jpg
モデル事業の結果(モデル事業後の歯科医院受診有無・リスク別の歯科医院受診有無)
さらに、モデル事業の実施方法・運用方法については、従業員側は約93%が「参加しやすかった」と評価し、事業所の担当者側は約82%が「実施しやすかった」と評価しました。そのため、モデル事業の方法は多様な職種・勤務形態の事業所において、従業員の口腔内の健康を維持・管理するにあたり実施しやすい方法であると考えられます。
画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/358265/LL_img_358265_7.jpg
モデル事業の結果(従業員目線の受けやすさ・事業所目線の実施しやすさ)
一方で、口腔への低関心・無関心層の参加等、参加者のすそ野を広げるための取り組みが必要であり、モデル事業ではなく自社の取り組みとして実施するためには、実施に係る費用面が課題として挙がりました。また、新たな保健事業や医療費適正化に資する保健事業として保険者のニーズもある中で、保険者が実施主体となる場合の効率的な運用方法の検討についても課題になると考えられます。
■今後について
モデル事業は従業員の参加しやすさ、事業所の実施しやすさ、口腔ケアのチェックによる高リスク者の歯科受診率向上については良い傾向が得られましたが、口腔への低関心・無関心層の参加、セルフケアの定着などに関しては課題が残りました。昨年度のモデル事業の延長として、令和5年度に「就労世代の歯科健康診査等推進事業に係る調査研究等一式」にて、令和4年度の課題を踏まえ、令和5年度も当社は全国でモデル事業を展開します。
なお、事業説明会は2023年6月22日(木)に実施します。事業説明会にご関心がある方下記のURLから申し込みが可能です。
URL: https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/event/shika-support202302
(申込サイトへの接続が難しい場合は dental-support@nttdata-strategy.com へご連絡ください。)
※1:公益財団法人8020推進財団の2014~2019年度調査研究事業「歯科医療による健康増進効果に関する調査研究」より。
※2:り患率とは、ある疾患の発生率のことを指します。
※3:一般健診とは、企業等の従業員が年に1回受診する全身の健康診断等のことを指します。
※4:専用のブラシ等の採取キットを用いて口腔内の検体を採取し、歯周病のリスクを判定する検査キットを総称し、「歯周病リスク検査キット」としております。その場で1~15分程度で結果が分かるものもあれば、検体を検査会社で分析し、2週間程度で結果を返送するものもあります。