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○本研究のポイント
・グアーガム分解物の腸内環境およびメンタルヘルスへの効果をヒトで検証
・グアーガム分解物は腸内環境を良好に保ち、“睡眠の質を改善する”ことを発見
・“仕事や勉強に対するやる気の維持”にもグアーガム分解物が関与することを発見
・グアーガム分解物 3g/日の摂取でも腸内細菌叢に影響することが明らかに
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/342069/LL_img_342069_1.png
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1. 研究背景について
近年、脳と腸が双方向に情報を交換し、相互に影響を及ぼし合う「脳腸相関」への関心が高まり、腸内環境が心の健康の維持にも重要な役割を果たすことが明らかになりつつあります。過労やストレスからメンタルヘルスを損なう人が増えている現代社会では、心の健康を維持するために、脳腸相関をターゲットとする食品も大いに注目を集めています。
グアーガム分解物(PHGG:Partially Hydrolyzed Guar Gum)は、グアー豆から作られた水溶性食物繊維です。これまでにさまざまな研究で優れた腸内環境改善作用が示されていますが、メンタルヘルスへの有効性については十分に検証されていませんでした。そこで、研究グループはPHGGの腸内環境改善を介するメンタルヘルスへの有効性について検証を行いました。また、1日あたり3gという、これまでの臨床試験と比較して少ない摂取量でも腸内細菌叢に影響するか、併せて検証しました。
2. 研究方法について
60名の健常者をプラセボ※1群(PHGG非摂取群)、PHGG 3g/日摂取群、PHGG 5g/日摂取群の3群に分け、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間試験※2を実施しました。被験者にはプラセボもしくはPHGGを毎日、8週間継続摂取させ、腸内細菌叢、排便状況、便成分、身体検査、メンタルヘルス(睡眠や意欲など)に与える影響を検証しました。
3. 主な研究結果について
腸内細菌叢について、プラセボ群と比較して、3g/日摂取群および5g/日摂取群では短鎖脂肪酸※3産生に寄与する菌が増加し、ムチン※4分解および炎症への関与が示唆される菌の増殖が抑制されるなど、腸内細菌叢に良い変化が認められました。また、5g/日摂取群ではプラセボ群に比べて排便頻度が増加し、排便のスッキリ感が改善するなど、便通改善作用が確認されました。メンタルヘルスに関しては、試験期間中は新型コロナウイルス感染症が急拡大している時期であり、ストレスを感じやすい状況であったためか、摂取4週後に全群でスコアが低下しました。
摂取8週後には全群でスコアが回復しましたが、プラセボ群よりも3g/日摂取群および5g/日摂取群においてスコアがより改善する傾向にあり、5g/日摂取群では「目覚めのすっきり感」、「起床時の疲労感」、「仕事や勉強に対するやる気」のスコアがプラセボ群に比べて有意に改善しました。
4. 考察と今後の展望
本研究によりPHGGの摂取で、健常者の腸内環境が良好に維持され、睡眠の質が改善され、仕事や勉強に対するやる気が維持されることが明らかになり、PHGGは腸内環境改善を介してメンタルヘルスに寄与する可能性が示されました。また、PHGGの1日3gの摂取量でも腸内細菌叢に影響することが分かりました。今後、詳細なメカニズムの解明を目指したより大規模な試験が望まれますが、PHGGは腸内環境改善だけではなく、心の健康の維持にも活用できることが期待されます。
■用語説明
※1 プラセボ
見た目や味などは試験食品と区別がつかないが、機能性成分を含まないコントロール食品。プラセボ効果といい、「試験食品を摂取した」という行為が精神的に作用し、効果をもたらすことがある。この影響を排除するため、試験食品の有効性検証には、プラセボとの比較が一般的とされている。
※2 ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間試験
被験者をランダムに異なる群に割りつけ、各群にプラセボか試験食品を一定期間摂取させ、各群の有効性や安全性を比較する試験。被験者、評価者の両方が、プラセボと試験食品がどの群に割りつけられているかを知らない状態で実施する。被験者および評価者の思い込みや先入観の影響を排除することができる、質の高い試験とされている。
※3 短鎖脂肪酸
食物繊維やオリゴ糖などを腸内細菌が発酵してつくる酢酸・プロピオン酸・酪酸などの有機酸。消化管のエネルギー源となり、バリア機能を強化し、消化管の運動を調節するなど、腸内環境の維持に重要な役割を果たす。また、全身のエネルギーとして使われたり、免疫を調節したりとさまざまな機能を有する。
※4 ムチン
腸管上皮を覆う粘性のある物質で物理的なバリアとして機能する。腸管上皮は、栄養成分の消化吸収を行うと同時に、ムチンや抗菌ペプチドなどのバリア機能によって腸内細菌や有害な物質の侵入を防ぎ、腸管の恒常性を保っている。ムチンはバリアとして機能する一方、一部の腸内細菌の栄養分や棲息環境としても利用される。ムチンを栄養源とするムチン分解菌の過剰な増加は、バリア機能を低下させ、炎症性物質の体内への侵入を許し、結果的に全身性の微小な炎症を引き起こすことがある。
■発表雑誌
雑誌名: 「Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition」
論文名: Partially hydrolyzed guar gum is associated with improvement in gut health, sleep, and motivation among healthy subjects.
著者 : Aya Abe, So Morishima, Mahendra P. Kapoor, Ryo Inoue, Takamitsu Tsukahara, Yuji Naito, Makoto Ozeki
URL : https://doi.org/10.3164/jcbn.22-75
(Advance online publication)
■太陽化学株式会社概要
商号 : 太陽化学株式会社
代表者 : 代表取締役社長 山崎 長宏
所在地 : 〒512-1111 三重県四日市市山田町800番
設立 : 1948年1月
事業内容: 乳化剤、安定剤、鶏卵加工品、機能性食品素材等の開発、製造。
資本金 : 77億3,062万円
URL : https://www.taiyokagaku.com/
伝統的な天然素材から、最先端技術を応用した新規素材まで様々な食材・工業用途素材を取り扱うと共に、研究開発型企業として、無限の可能性を秘めた機能性食品素材の創造に取り組んでいます。
■摂南大学概要
学長 : 荻田 喜代一
所在地 : 寝屋川キャンパス 〒572-8508 大阪府寝屋川市池田中町17-8
枚方キャンパス 〒573-0101 大阪府枚方市長尾峠町45-1
開学 : 1975年4月1日
設置学部: 法学部・国際学部・経済学部・経営学部・理工学部・
薬学部・看護学部・農学部
URL : https://www.setsunan.ac.jp/
人間力・実践力・統合力を養い、自らが課題を発見し、そして解決することができる知的専門職業人を育成することを教育の理念に掲げ、社会の多様な要請に応える人材を育成しています。2023年4月、現代社会学部を開設予定です。