【早稲田大学 高橋 利枝教授】
A FUTURE WITH AI VOICES OF GLOBAL YOUTH
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【早稲田大学 高橋 利枝教授】
私は、人を幸せにするAI社会の創造に向けて、「ヒューマン・ファースト・イノベーション」を提唱してまいりましたが、2022年は、まさにその実践の年となりました。国際連合との共同プロジェクト「AIのある未来」の活動についてご報告したいと思います。
2021年9月10日、国連グテーレス事務総長は、国連が創設75周年を迎えた節目として、「私たちの共通の課題(Our Common Agenda)」を発表しました。この11番目の課題として、「若者に耳を傾け、協働する」が掲げられています。この課題に応えるために国連のランバート・ホーゲンハウト(Lambert Hogenhout)氏より、若者とAIに関する共同プロジェクトを依頼されました。このプロジェクトは、次世代を担う若者のAIに関する意見を国連や政策立案者に届け、より良い未来社会を共に創ることを目的としています。
2022年前半、世界35カ国から参加した254人の若者たちと一緒に、AIとロボットの未来について、サーベイ調査と「イマジネーション・チャレンジ」を実施しました。8月には最終レポートを国連の学術誌であるUnited Researchに発表しました(11月国連のTechnology Policy seriesに再掲載)。またこのレポートは193カ国の国連代表に届けられました。
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A FUTURE WITH AI VOICES OF GLOBAL YOUTH
調査結果から、大半の若者たちはAIロボットの仕組みを理解していないにもかかわらず、AIに対する信頼度は高く、総じてポジティブな態度であることがわかりました。そして、工場労働、配達、家事といった比較的単純な労働をはじめ、多くの分野でAIロボットの導入を望んでいます。しかしながらその一方で、人間の思いやりや温かみを重視するような「子どもや高齢者のケア」、重大な決定がなされる「政治的意思決定」、創造性やコミュニケーションが必要な「アート・文化」の分野では、依然として「人間」を望んでいます。AIがもたらすリスクとしては、失業や軍事利用に対する懸念が多くみられました。
また超えてはいけない一線としては、「人の命を奪う」、「人と同じ権利を保有」、「AIがより高度なAIを作る」と答えた人が半数を超えました。
世界の若者に対するサーベイ調査と「イマジネーション・チャレンジ」から得られた知見を具体的なアクション・プランに移すために、2022年11月、若者たちの代表と、企業、欧州委員会、国際連合などの国際組織の代表と一緒に、国連主催のハイレベル会議を開催しました。2日間にわたって活発な議論が行われ、デザイン、ガバナンス、共存について、18の提言を提示しました。
【デザインについての7つの提言】
● 文化に敏感であること
● ロボットを親しみやすく
● AIインタラクション原則
● AIをオプトアウト可能に
● リスクにあわせた調整
● 使用前の説明
● 人間の能力の拡張と協働のためのデザイン
【ガバナンスについての7つの提言】
● インクルーシブであること
● 産業界と政策立案者の協働
● 若者の活用
● 柔軟であること
● 積極的な市民参加
● ソフトローの活用
● 「承認シール」の作成
【共存についての4つの提言】
● AIリテラシーの国際プログラムを開始する
● キャリアアドバイスとリスキリングを提供する
● 雇用に率先的に取り組む
● 国連が積極的な役割を担う
AIロボットの「デザイン」「ガバナンス」「共存」に関する提言(国連「AIのある未来」, 2022.11.24, http://afuturewithai.org/recommendations.pdf )
https://unite.un.org/news/future-ai-voices-global-youth-report-launched
このように若者たちは、未来のAI社会に関して、肯定的に捉えている一方で、国際的な対話により、AIの設計と使用の両方に対する規制を強く望んでいます。しかしながら、AIやロボットに対するイメージや態度には、多くの文化的な差異があります。そのため私たちは文化的な差異を理解したうえで、AI/ロボット開発や規制に関する国際的な対話を進めなければなりません。
今回のプロジェクトで得られた最も重要な知見の一つは、次世代を担う若者たちが、AIに伴う新たなリスクを克服する能力を人間が持っていると考えていることです。今後は、企業や政策立案者、国際組織の代表、研究者たちと、世界の若者たちとの橋渡し役として、グローバルなコミュニティを創造していきたいと思います。2023年国連「AIのある未来」プロジェクトにおいて、18の提言を元に、人を幸せにするAI社会の創造に向けた具体的な取り組みが始まります。
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