抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂製ネイルチップ
抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂ペレット
抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂成型品
抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂製コーティング材料、塗料
GSアライアンスは、抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂製のプラスチック、コーティング材、塗料などの化学製品を開発しています。同社は、2023年に東北大学青葉山新キャンパスに完成予定の次世代放射光のコアリションメンバーとなったこともあり、この度の共同研究の開始に至りました。
【発表のポイント】
GSアライアンス株式会社と東北大学で共同研究を開始。
プラスチックなどによる環境汚染と、ウィルス感染予防を両立できる抗菌、抗ウィルス性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂製のプラスチック、コーティング材、塗料などの、より高性能な製品開発を目指す。
【詳細な説明】
GSアライアンス株式会社は抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂製のプラスチック、コーティング材、塗料などの化学製品群を開発し、サンプル販売を始めています。抗ウィルス性を持つ同製品も開発中です。これまでに抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂ペレット、それらの成形品であるネイルチップ、マスククリップ、カトラリー、そして抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂コーティング材、塗料なども開発してきました。
抗菌性プラスチック、抗菌性塗料などは市場に既にある製品ですが、これらは石油由来のものであり、天然バイオマス系生分解性樹脂材料をベースとしたこれらの製品は、国内外を見渡しても商業化している企業はあまり見受けられません。このような製品は環境汚染対策と感染予防の両立を実現できます。
人口爆発に伴う気候変動や環境汚染などは深刻な問題であり、プラスチック汚染や海洋マイクロプラスチック汚染も生態系を破壊する壊滅的なレベルになりつつあります。特にCOVID-19の影響により、マスク、医療用防護服、手袋、フェイスシールドなどの石油系材料を用いるプラスチック製品が大量に生産され、消費されており、人々の意識が変化して、新型コロナウィルスがある程度終息したとしても今後もこの傾向は続くと思われます。使用済みのマスクなどが、新たな海洋プラスチック汚染の原因になりつつあるような報道もあり、いわゆるコロナごみの世界的な増加も懸念されています。
また、これまでのプラスチック製品に抗菌性、抗ウィルス性を付加したような抗菌マスク、抗菌シールド、抗菌塗料などの製品も開発され、これらの製品の需要は今後もますます伸びてくることが予想されます。これらの製品群には石油系の樹脂材料などが主に原料として使用されていますが、これらの石化由来原料は石油由来のプラスチックと同じく、環境への負担が大きいのが問題です。このような問題に対して、GSアライアンスにおいては抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂製のプラスチック、コーティング材、塗料などの化学製品群を開発してきました。
一方でGSアライアンスが開発したこれらの製品群は、本来なら廃棄後は微生物に生分解されている生分解性樹脂に、抗菌材料を複合化させているような組成のため、抗菌性が生分解してくれる微生物にも作用し生分解性が低下する、生分解性が無くなるなどの可能性も懸念されます。例えば同社の射出成形可能な抗菌性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂などは、セルロースナノファイバーに銀ナノ粒子を上手く複合化させ、ポリ乳酸に混ぜたような材料ですが、この銀ナノ粒子による抗菌性の影響により、本来、生分解してくれる微生物にも抗菌性が作用してしまい、生分解性が低下する可能性があります。
またこのような材料に対しての複合化の方法、コストを下げるためにより安価な銅、亜鉛系の抗菌、抗ウィルス材料を複合化させるような検討も今後の課題です。さらに、同社の合成している窒化炭素系の可視光応答型光触媒材料、量子ドットや金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)などの最先端材料は、可視光下での光触媒能を有しているとの研究報告もあり、光照射下という条件下ではあるものの、このような最先端材料との組み合わせで、さらに優れた効果のある製品群も開発できる可能性もあります。
このようにさらなる高性能を持つ抗菌、抗ウィルス性を持つ天然バイオマス系生分解性樹脂製の化学製品群を開発することも、東北大学とGSアライアンスで共同で目指します。まずは既存の同社の製品群の解析、そしてさらなる改良品の開発へと、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターおよび農学研究科とGSアライアンス株式会社においての共同研究開発を今後加速していきます。
【問い合わせ先】
GSアライアンス株式会社(冨士色素株式会社グループ)
森 良平(もり りょうへい)
電話 : 072-759-8501
E-mail: moriryohei@fuji-pigment.co.jp
●研究に関すること
東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター
大学院農学研究科(兼務)
原田 昌彦(はらた まさひこ)
電話 : 022-717-4333
E-mail: masahiko.harata.b6@tohoku.ac.jp
●報道に関すること
東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター
事務(担当:山本)
電話 : 022-217-5204
E-mail: sris@grp.tohoku.ac.jp