インド向けプロトタイプ
札幌市型トイレ
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インド向けプロトタイプ
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札幌市型トイレ
当社はSDGsの目標のうち6番目の『安全な水とトイレを世界中に』の実践を掲げ、女性スタッフを中心とする開発チームをインドに派遣、現地のニーズや課題などを探って来ました。インドでは、野外排泄による水質汚染が深刻な社会問題となっています。トイレ自体を不浄なものとして、そもそも設置しない家も多く、女性が公衆トイレで襲われるなど治安が確保されないケースも少なくありません。トイレの整備を進めようにも下水道などのインフラは都市部を除くと未整備で、水洗式を全土に普及させるには膨大なコストと時間がかかってしまいます。
こうした課題を解決するには、上下水道と連結しなくても使用できる自己完結型の公衆トイレ(オフグリッド・トイレ)の普及を急ぐべきだと判断、バイオによるトイレの処理技術や空気中から水を抽出する技術を持つベンチャー企業などと協業し、外装を3Dプリンタで印刷した自己完結型のハイテクトイレを試作しました。
当社の3Dプリンタは速乾性の特殊モルタルをロボットアームのノズルから抽出して印刷する仕組みです。型枠を一切使わず、複雑なテキスチャーの構造物をスピーディーに造形することができます。ただ日本では、コンクリートが建築基準法上の指定建築材料となっており、特殊モルタル等の使用には大臣認定などの性能評価が必要なことから、今回は、プリントした中空状の外装を型枠代わりに使用し、その中にコンクリートを充填して配筋を施した鉄筋コンクリート造の構造体としました。
国内初の印刷された小規模実建築物となるこのトイレは、花のつぼみをイメージしてデザインし、複雑な凹凸を持つ曲線形状に仕上げました。建設現場にロボットを直接持ち込み、基礎の上にロボットアームで直接印刷するオンサイトプリンティングを初めて採用しました。サイズはφ3,740×高さ2,660mm(内寸φ3,100×高さ2,500mm)。
バイオトイレのモジュールは、正和電工株式会社(本社:旭川市、代表取締役:橘井 敏弘)が開発したおがくずを使用するタイプを採用しました。スクリュー付きタンクにおがくずを充填しておくと、おがくずが排泄物によって保水されます。その後タンクに設置されているヒーターで加熱(50℃)し、スクリューで攪拌することにより排泄物の90%の成分である水は蒸発。残った約10%の固形分を微生物(好気性バクテリア)が分解し、発散させます。
特別な菌の使用は不要で、排泄物に含まれている腸内細菌と自然界に生息している微生物の働きで水と二酸化炭素に分解処理されます。蒸発も分解もされない無機成分(窒素、リン酸、カリウムなど)だけが「残渣」として残り、粉状態でおがくずに吸着。これを肥料として使用することができます。
上水道が整備されておらず、地下水の汚染も激しい地域を想定し、空気中の湿気から水を生成する水生成装置も装備しました。アクアムホールディングス株式会社(本社:東京、代表:河崎 悠有)が開発した技術で、空気中の湿気を強力なファンによって取り込み、コンデンサーによって冷却して強制的に結露を起こし、水を生成します。その水を活性炭、ミネラル、ROフィルター等を通過させることで安全な飲料水となります。今回は手洗いとウォシュレット用として使用します。
また手洗い水を節約するため、沐羽科技(本社:北京、代表:李 啓章)より低圧霧化技術を導入しました。特殊なノズルとコンプレッサーを用いることにより、50μm以下の細かな霧状の水を1,000万滴/秒以上噴射する技術で、通常の蛇口に比べて約90%の水を節水することができます。
インドではスマートフォンが広く普及していることに着目し、トイレ用のスマートロックをメディアスケッチ株式会社(本社:東京、代表取締役CEO:伊本 貴士)と共同開発しました。トイレの開閉をスマホで行えるだけでなく、ブロックチェーンを活用し、自分の前の利用者の利用状況をレーティングできる仕組みを導入したのが特徴です。「次のひとのためにトイレをきれいに使う習慣」を定着させることにつなげる狙いがあります。
当社では、インドでトイレの普及活動を展開しているNPO法人スラブ・インターナショナル(Sulabh International)と交流を続けており、敷地内にあるトイレ博物館の一角に自己完結型トイレを寄贈する方向で調整しています。