登壇者
講演の様子(西沢氏)
発酵の概念図
講演の様子(藤本氏)
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/221151/LL_img_221151_1.jpg
登壇者
今、「健康」に対する一人ひとりの意識が大きく変わり、免疫力を高める食品への関心が高まっています。特に、納豆・ヨーグルトなどの「発酵食品」には多くの注目が集まっており、これからの時代、「発酵」は商品購入のきっかけになり得ると考えられます。時代のニーズを捉えた商品開発が求められる中、「発酵というキーワードは自社の商品には関連がない」「これからの商品開発の方向性に迷っている」という食品メーカーに向けて、知見の共有を行う場を設けました。
本セミナーでは、発酵の専門家、腸内細菌の専門家、健康トレンドの専門家3名にご登壇いただき、3つのテーマ((1)“発酵”とは何か?(2)免疫と“お腹の中での発酵”の関係(3)体内発酵の重要性)についてお話いただきました。また、帝人株式会社廣川氏より、大腸で発酵する食物繊維イヌリンの紹介を行いました。当日は、食品メーカーの開発ご担当者様、マーケティングご担当者様、約200名にご参加いただき、盛況のうちに終わりました。
■“発酵”の概念を拡大する「体内発酵」
セミナー冒頭には、日経BP総合研究所 客員研究員の西沢邦浩氏から本セミナーの趣旨が伝えられました。「“発酵”というと、発酵食品など体の外で行われる“発酵”が思い浮かぶが、人間の大腸でも同様の“発酵”は起こっていて、自身が発酵器官であると捉えた“体内発酵”の考え方が注目されている」として、「体内発酵」まで“発酵”の概念を広げることで、従来の発酵食品以外の様々な食品に“発酵”の機能を付加することができると説明。さらに、現在、免疫力アップを期待されて発酵食品の売り上げが伸びていることに触れ、「体の外と中の“発酵”は私たちの健康にどう影響しているのかについて、改めて先生方にお話を伺い、これからの商品開発のヒントにしていただきたい」と話しました。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/221151/LL_img_221151_3.jpg
発酵の概念図
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/221151/LL_img_221151_2.jpg
講演の様子(西沢氏)
■免疫における発酵食品の主なメリットは、微生物を摂取し、腸内環境を整えること
次に、発酵マイスター・プロフェッショナルである藤本倫子先生から、“発酵”とは「微生物が有機物を分解し、できた物質が人間の役に立つこと」とした上で、発酵食品の5大効果((1)保存性UP (2)栄養価UP (3)美味しさUP (4)吸収率UP (5)腸内環境UP)について紹介いただきました。その中でも、免疫に影響するのは腸内環境UPであり、免疫における発酵食品のメリットは、発酵食品に含まれる微生物が大腸で働き、腸内環境を整えることと解説いただきました。
また、「発酵食品は無理に食べるものではなく、少しずつ継続的に摂り続けることが大切」とコメントいただきました。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/221151/LL_img_221151_4.jpg
講演の様子(藤本氏)
■水溶性食物繊維が体内発酵することで生まれる短鎖脂肪酸が免疫力向上に働く
岡山大学大学院環境生命科学研究科の森田先生からは、免疫と体内発酵の関係について解説いただきました。食事から摂取した水溶性食物繊維が大腸に棲む善玉菌の働きによって、大腸の中で発酵し、代謝物として短鎖脂肪酸を産生する。この短鎖脂肪酸が大腸から吸収された時に免疫系に働くということを、エビデンスを交え解説いただきました。
「発酵食品を摂ることと、体内で発酵することの免疫の観点からの違い」についての質問には、「大腸で発酵することがポイント」とした上で、「短鎖脂肪酸を経口摂取しても大腸には運ばれない。大腸までたどり着かず、消化管の上部(小腸)で吸収され、エネルギー源として使われてしまう。腸内細菌の多い大腸で発酵を起こし、短鎖脂肪酸を大腸から吸収させることが免疫には大切。そのためには胃や小腸で消化されない水溶性食物繊維を摂って、体内発酵を起こす必要がある」とお答えいただきました。
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/221151/LL_img_221151_5.jpg
講演の様子(森田氏)
■大腸で発酵する食物繊維イヌリン
トークセッションの後には、体内発酵する食品素材イヌリンについて、帝人株式会社ヘルスケア新事業部門の廣川雅一氏から紹介いただきました。
イヌリンは世界で最もメジャーな水溶性食物繊維であり、飲料、パン、焼き菓子、乳製品など幅広いジャンルで活用されています。最大の特徴として、善玉菌に発酵されて短鎖脂肪酸を生成する力である『発酵力』の高さが挙げられます。その他にも、エビデンスに裏付けられた多様な機能性や、砂糖代替や脂肪代替としての使い方、乳児用ミルクにも使われるなどの安全性の高さについても説明いただきました。
また、西沢氏から廣川氏へ投げかけられた、「海外で2020年はイヌリンイヤーと言われている中での、現在のイヌリンの世界市場の動き」についての質問に対しては、「これまでもイヌリンは安定的に成長してきたが、今年は世界的な免疫力に関する注目の高まりからイヌリンの需要が急拡大し、特にヨーロッパでは供給がひっ迫するほどの状況です」とお答えいただきました。
■登壇者プロフィール
画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/221151/LL_img_221151_6.jpg
森田 英利氏
森田 英利氏
岡山大学大学院 環境生命科学研究科 教授
岡山大学大学院自然科学研究科博士課程修了。1991年 米国ミネソタ州立大学ポスドク。1992年 麻布大学獣医学部に助手、2010年 同大学の教授を経て、2015年から現職。
腸内細菌学会広報委員、日本乳酸菌学会評議員。任期を終えたものに、内閣府消費者委員会新開発食品調査部会新開発食品評価第二調査会委員、日本畜産学会常務理事、日本乳酸菌学会理事、日本NO学会評議員。
腸内細菌・腸内フローラ(腸内細菌叢)・プロバイオティクスに関する研究での共著論文のjournalの掲載歴に、Nature、Cell、Science、Nature Medicine、Nature Biotechnologyなどがある。
画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/221151/LL_img_221151_7.jpg
藤本 倫子氏
藤本 倫子氏
日本発酵文化株式会社 常務取締役/運営統括マネージャー
東京農業大学在学中、日本酒の魅力に出会い、卒業後、東京大学医科学研究所にて癌細胞を学ぶ。
株式会社八海山入社し、営業企画室・商品開発室に10年所属し、「千年こうじや(米・麹・発酵をテーマとした店舗)」の立ち上げを行う。発酵マイスター・プロフェッショナルを取得。2017年7月、発酵食文化の啓蒙活動に専念するため、独立。
画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/221151/LL_img_221151_8.jpg
西沢 邦浩氏
西沢 邦浩氏
日経BP 総合研究所 客員研究員/健康医療ジャーナリスト/編集者
早稲田大学卒業。小学館を経て、1991年日経BP入社。1998年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。2005年より同誌編集長。2008年「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、2010年まで編集長。2016年まで日経BP総合研究所主席研究員。2018年株式会社サルタ・プレスを設立し、代表取締役に。日経BPでは引き続き、客員研究員として活動。同志社大学生命医科学部嘱託講師、ウエルネスフード推進協会評議員、日本腎臓財団評議員などを務める。著書に「日本人のための科学的に正しい食事術」(著)、「ヒットする!食品の機能性マーケティング(共著)」など。