表2
図1
表1
図2
■調査結果の要旨
健常者と非特異的腰痛等の有訴者、左利き足と、右利き足者からなる総数528人の、仙腸関節の固定腸骨の臨床像(図1)を調べました。結果は、有訴者の固定腸骨が健常者よりも有意に多いのですが、いずれのグループも、左腸骨に検出される固定は、前上方と内方の方向だけで、右腸骨は後下方と外方の方向だけでした(表1)。さらに、各グループ内では、右腸骨の外方方向が、他の方向の固定よりも有意に多く、また、右腸骨の後下方と、左腸骨の前上方の固定は、正の相関性があります。多変量解析で解析すると、右腸骨の外方方向は、健常者が有する固定であると判断されました。これらのことから、仙腸関節には、固定腸骨があり、固定する方向は、左右で異なることがわかりました。
一方、左右脳半球の運動能力は、左右の手足を、それぞれ優先的に活動することが知られています(図2)。このメカニズムがヒントとなり、左右腸骨が真逆の方向に固定する謎が、解けました。それは、以下の2つが理由となります。
(1)左腸骨が、前上方へ固定する理由は、右脳由来の優先的下活動が、左腸骨と仙骨の起き上がり運動で、関節刻面を密着するため(図2,3)で、
(2)右腸骨が、後下方と外方に固定する理由は、左脳由来の優先的な活動が、仙骨のうなずき運動で、関節刻面を離開させ弛緩するため(図2,3)です。
人は、軸足と運動足の能力が、左右腸骨を真逆方向に固定します。腸骨が固定されるのは、避けることが困難な理由があることがわかり、仙腸関節性の腰痛の起因を特定しました。仙腸関節の不都合な稼働は、体幹を不安定にし、腰背部の筋・筋膜性腰痛、椎間関節、椎間板性の腰痛を発現する仮説を行いました(詳細1)。
非特異的腰痛の治療法は、仙腸関節の固定を除く施術が、原則になると結論します。
基本的な施術法は、仙腸関節の回復を目的に、左右腸骨の固定方向から、反対側へ押圧します。腸骨は左右で、それぞれ別方向に固定しているので、左右両方の側に同方向の操作は、症状が増悪することにつながります(詳細2)。
■背景
我が国で、すべての有訴者の中で、最も多いのが腰痛です。多くの人は、繰り返し発症するので、国民的な疾病です。突然に発症する『ぎっくり腰』は、腰背部の症状ですが、その原因は不明です。専門的には非特異的腰痛と呼ばれ、経験する腰痛疾患の85%がこの腰痛です(表2)。
原因がわからない理由は、仙腸関節は働き方が複雑で、画像検査には表れないためです。
治療法は、安静療法、薬物療法、理学療法、温泉療法と多岐の対処療法がありますが、一長一短で、原因に基づく本格的な治療方法の研究開発が必要でした。
当院では、20年にわたり、腰痛で来院される有訴者の仙腸関節を調べて来たことにより、今回、非特異的腰痛の原因を、まとめることが出来ましたのでご報告いたします。
■当院の概要
本院 : 桜カイロプラクティック
本院所在地 : 静岡県浜松市中区野口町367 ヴィーブル野口
受付時間 : 10時~12時、14時~18時
営業日 : 月曜、火曜、水曜、金曜、土曜日
営業内容 : 骨盤、脊柱の調整
分院 : さくら手技療法院
分院所在地 : 静岡県袋井市堀越1049-4
設立 : 1995年5月5日
代表者 : 吉野和廣
ホームページ: https://c-sakura.jp/
■当院の研究論文等
1. 健常者と非特異的腰痛症並びに背部痛症者における仙腸関節変位像の統計的分析. 吉野和廣,日本カイロプラクティック徒手医学会誌、9:47-52、2008 (最優秀論文賞受賞)
2. 健常者と非特異的腰痛並びに背部痛者における脊柱変位像の分析. 吉野和廣. 日本カイロプラクティック徒手医学会誌 10:32-36、2009 (優秀論文賞受賞)
3. 左並び右利き足被験者における右仙腸関節の外方変位象. 吉野和廣、吉野和織 日本カイロプラクティック徒手医学会誌、11:60-67,2010 (最優秀論文賞受賞)
4. 健常者と非特異的腰痛者における仙腸関節可動性不全像の統計的分析 吉野和廣 第17回日本腰痛学会、東京コンファレンスセンター・品川 11.21-22,2009
5. 健常者と非特異的腰痛者における仙腸関節の臨床像 吉野和廣、吉野和織、日本統合医療学会誌、3(2):86, 2010
6. 骨盤の歪みの実像を考える 脊椎原性疾患の発症機序を考えて(第五報)、吉野和廣、吉野和織、日本療術学会誌、23(1):20, 2011
7. 肩甲帯の左回旋に対する脊柱の補正作用、吉野和廣、吉野和織、日本カイロプラクティック徒手医学会誌、12:58-64, 2011
8. 脊柱フィクセーションが心拍変動(自律神経活動)に及ぼす影響について. 吉野和廣、吉野和織、日本療術学会雑誌 27(1):29,2015
9. 脊柱のねじれ補正が脊柱体表温度に及ぼす作用を考える 吉野和廣、吉野和織、日本療術学会雑誌 28(1):30,2016
10. 車運転時、脊柱のねじれを正した時の自律神経活動 吉野和廣、吉野和織 日本療術学会雑誌 29(1):26,2017
11. 脊柱の調整は自律神経の活動を健常にするか? 吉野和廣, 吉野和織. 日本カイロプラクティック徒手医学会誌 20:53-59、2019
その他、発表多数有
■当院の書籍出版
「からだのねじれを正せば交感神経が整う」吉野和廣著
株式会社たま出版、東京 2017年
■当院の物販物
脊柱補正板:BBPバックアシスト(楽天市場 出店中)
https://item.rakuten.co.jp/sakuraofficefukuroi/10000000/
■当院のコラム
・非特異的腰痛の原因(1) : https://sakurachiro.hamazo.tv/e8853940.html
・非特異的腰痛の原因(2) : https://sakurachiro.hamazo.tv/e8855463.html
・体の超過酷な部位 : https://sakurachiro.hamazo.tv/d2008-08.html
・左利き足と仙腸関節 1-6: https://sakurachiro.hamazo.tv/d2009-04.html
・骨盤の歪みとはどういうことを云うのか: https://sakurachiro.hamazo.tv/d2014-01.html