青森の文化を満喫できる宿「星野リゾート 青森屋」は、2020年6月8日、「きみがら(*1)プロジェクト」の活動として、ホテル敷地内の畑で馬耕(ばこう*2)とトウモロコシの種まきを行いました。2019年に開始したこのプロジェクトでは、青森県の暮らしにおける馬とトウモロコシの資源循環を施設内で再現することを目指し、馬耕を復活し馬の飼料となるトウモロコシを育て、残った皮を伝統工芸品に作り変えます。今後は、10月に初収穫し、12月から宿泊者がきみがら作品を製作するアクティビティを実施できるよう、トウモロコシの栽培と工芸品の技術習得を進めていきます。
*1 青森の方言でトウモロコシの皮の意味。 *2 馬の力を借りて田畑を耕す農法。
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きみがらプロジェクトとは
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きみがらスリッパは、トウモコロシの皮を材料にスリッパを作る青森県の伝統工芸品です。軽くて丈夫な上、履き心地がよく、夏は涼しく、冬は温かく過ごせます。かつて国内有数の馬産地だった青森県で、馬の飼料であるトウモロコシの残った皮を活用したことで生まれ、農閑期に家庭で作られてきました。現在、その作り手が減少しており、高齢化や後継者不足が課題です。きみがらスリッパを継承するため、青森屋は、作り手である「十和田(とわだ)きみがらスリッパ生産組合」の協力を得ながら、馬耕を復活し材料となるトウモロコシをホテルの敷地内で生産し、工芸品の製作技術をスタッフが習得する取り組みを開始しました。
敷地内にトウモロコシ畑が誕生
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6月8日に種をまいた畑は、青森屋で働く馬のスタッフが耕しました。馬が農機具の鋤(すき)を引き、人間が馬と息を合わせ鋤のバランスを調整しながら、土を起こしました。当日は、約1,000株分の種をひとつずつ手作業で畑にまきました。ほとんどのスタッフは農業経験がなく、工芸品の材料を揃えるためには多くの手間ひまがかかることを改めて実感しました。スリッパ1足編むのにはトウモロコシ20本分以上の皮が必要です。今後、草取りや害獣・台風対策など栽培作業が続きますが、アクティビティに向け材料を着実に確保できるように、ひとつひとつ大切に育てていきます。
種まきに至るまでの取り組み
<馬耕の技術を身に着けるまで>
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青森をはじめ全国各地で盛んだった馬耕は、昭和30年代頃から耕うん機が普及するにしたがい行われなくなり、現在では限られた地域や人々にのみ受け継がれています。青森屋で挑戦するにあたり、まずは知識を深め農機具を調達するところから始まりました。北海道や長野県など全国へ足を運び、農機具の扱い方や、人間と馬を訓練する方法など、専門的な知識を学びました。上手に耕すには、馬に決まったコースを一定の間隔で進んでもらい、人間が手先に伝わる振動と土の状態を見て鋤を調整する必要があります。実際に訓練してみると、普段運行する馬車やお客様のお出迎えの業務とは大きく異なる技術が必要なことに、馬も人間も苦労しました。未熟な点はありながらも、春の耕作で実施することができました。
<管理は手作業!トウモロコシの栽培を勉強>
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きみがらスリッパに使われるトウモロコシには、主に飼料用に栽培される「デントコーン」という品種が最も適しています。デントコーンは日本国内でも各地で栽培されていますが、多くは茎や実を農機械で破砕して収穫されます。きみがらスリッパの材料を揃えるには、実をひとつずつ収穫し、皮をむき、乾燥させる昔ながらの手作業が必要です。栽培方法を勉強するため、生産組合の畑に伺い、昨年10月に収穫、今年5月に種まきに参加させていただきました。実際に体験してみると、教科書を読むだけでは分からないことや、作業の大変さを知ることができました。
<繊細な技術が必要な工芸品製作修行の日々>
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昨年の12月から、きみがらスリッパや小さなぞうりを編む技術を生産組合の方々から学ばせていただいています。編む手順を覚えるのはもちろん、1枚1枚異なる皮の状態を見極め、部位に合った皮を選定・加工し、適切な力加減で編む能力を身に付けなければいけません。アクティビティで宿泊者にどんな体験をしてもらうか考えを巡らせながら、作り手としても一人前に近づけるように、修行を続けています。
今後の予定
2020年 6月 トウモロコシの種まき
7月~ 草取り、害獣・台風対策など栽培作業
10月 青森屋でトウモロコシの初収穫
11月~ 収穫したトウモロコシの皮むき、加工
12月~ きみがら作品製作体験開始
備考:状況により、予定が変更になる場合があります。
「十和田きみがらスリッパ生産組合」の協力
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きみがらプロジェクトは、十和田きみがらスリッパ生産組合の協力を得て進めます。生産組合は、きみがらスリッパの製作・販売を通し、技術を継承するため、昭和38年に設立されました。組合員はほとんどが地元で農業を営むかたわら、工芸品の製作に携わっています。製作にあたっては、材料となるトウモロコシを生産・収穫し、皮をむき、乾燥させ、色の良い皮だけを選別し、編む工程を、半年以上かけて行います。今回、馬や農業、工芸品を通して青森の文化を満喫してほしいという青森屋の思いと、きみがらスリッパを後世に伝えるために作り手を増やしたいという生産組合の思いが合致し、プロジェクトの計画に至りました。
目指すのは、青森本来の暮らしの再現
かつて、国内有数の馬産地だった青森県では、馬が農耕や荷物運搬の働き手として活躍していました。馬の飼料であるトウモロコシが大規模に栽培され、大量に余るトウモロコシの皮がもったいない、ということでスリッパを編むようになったのが、きみがらスリッパの始まりです。馬の力を借りて畑を耕し、馬糞(ばふん)は堆肥となり、飼料を育て食料を確保し、食には不要な材料まで無駄なく工芸品に生まれ変わらせる資源の循環が、青森では昔から行われてきました。青森屋では、地域本来の暮らしを再現し、観光資源として活用する SDGs17の目標よりことで、持続可能な地域文化の継承活動に繋げていきます。
星野リゾート 青森屋
「のれそれ(*青森の方言で目一杯の意味)青森~ひとものがたり」をコンセプトに、青森の祭りや方言などの文化を満喫できる温泉宿。約22万坪の敷地内には、池や古民家の点在する公園もあり、食事や多彩なアクティビティを楽しむことができる。
〒033-8688 青森県三沢市字古間木山56/客室数 236室
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