RIETI EBPMシンポジウム
広島県のアンケート
イギリスのタバコのポイ捨て事例
証拠に基づいて政策立案をするEvidence-Based Policy Making(EBPM)は、政府のいわゆる骨太の方針(2019)にも「各府省は、全ての歳出分野において行政事業レビューを徹底的に実施するとともに、EBPMを推進し、予算の質の向上と効果の検証に取り組む」と明記されるなど、政策担当者に不可欠なものとなっています。第3回目となる今回のEBPMシンポジウムでは、「EBPMを進展させるために」をテーマに、エネルギー問題や防災問題へのEBPM利用やEBPMの行政での実装といった具体的な成功事例に加え、AIに基づくビッグデータ分析や政治・行政における不正統計リスクの根絶といった将来を見据えた社会課題とEBPMの関連について大竹 文雄氏、中室 牧子氏などの専門家が議論いたしました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/207128/LL_img_207128_1.png
RIETI EBPMシンポジウム
【EBPMとは】
社会の様々な問題が社会の「病気」だとすれば、政策はその病気を治す「薬」です。
EBPM(証拠に基づく政策立案)とは、政策立案について、政策目的を明確化するとともに、効果の測定に重要な関連情報やデータ(エビデンス)に基づくものとする、つまり「ちゃんと効く薬にする」「薬が効いているかどうか確かめる」ことをいいます。
霞ヶ関のシンクタンクであるRIETIは、理論的・実証的な研究を行うとともに、政策現場とのシナジー効果を発揮してエビデンスに基づく政策提言を政府に対して行うことをミッションとしています。
RIETIおよび国内外のEBPMに関する取り組みについて https://www.rieti.go.jp/jp/projects/ebpm/index.html
【RIETI EBPMシンポジウムで報告があったエビデンス報告】
■告知の手法を変えれば救えた命があった?その反省を活かした「みんなで減災」運動
広島県では2014年に土砂災害で77人の命が失われたため「みんなで減災」県民総ぐるみ運動を展開し、避難所や避難経路を確認した住民の割合は2014年の13.2%から2018年には57.2%へと大きく向上ししました。それでも、2018年7月の豪雨災害で実際に避難した人は1%以下で、114名もの死者・行方不明者が出るという結果に。
それは何故なのか?大竹 文雄・大阪大学大学院経済学研究科教授によると、人々は避難勧告を聞いても、「避難するのは面倒」「先延ばししたい」といった心理が働くのだそうです。そこで、どういう避難勧告が出たらどういう行動をとるのか、広島県がアンケートを行いました。その結果(つまりエビデンス)を受けて、広島県が採用したメッセージは右のA~Fのどれだったのでしょうか?
(答えは、下記RIETIイベントページの報告3「防災におけるナッジの活用」をご確認ください。)
■たばこのポイ捨てが激減!人を動かす“ナッジ”の手法をEBPM導入の第一歩に
小林 庸平・RIETIコンサルティングフェロー/三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 経済政策部 主任研究員 兼 行動科学チームリーダーからは、行政が実際にEBPMを導入しようとするにはまず“ナッジ”から始めては、との報告がありました。“ナッジ(nudge)”とは、個人の意思を尊重しながら、少ない財政コストで社会的により良い選択を促すことができる手法で、「そっと後押しする」という意味があります。
“ナッジ”の事例としては、イギリスのNPO団体が行った「たばこのポイ捨て対策」が有名です。サッカー選手の人気投票形式のゴミ箱を道に設置したところ、多くの人が投票したいがために吸い殻をゴミ箱に捨てるようになり、たばこのポイ捨てが激減。ナッジを使えば、こんな風に社会の病気に「効く薬」を試してみることができます。
(詳しくは、下記RIETIイベントページの報告2「ナッジをEBPMの入口に-省エネ情報表示のオンライン実験を題材に-」をご確認ください)
上記の事例含め、シンポジウムで報告された内容については、RIETIホームページをご覧ください。
「エビデンスに基づく政策立案を進展させるために(議事概要)」
https://www.rieti.go.jp/jp/events/19122501/summary.html