
作家の芥川龍之介(1892~1927年)の命日である24日、「河童忌2025特別鼎談(ていだん) 芥川龍之介 室生犀星 萩原朔太郎のいた田端~100年越しに集う3人の『孫』たち」(田端文士村記念館主催)が北区の滝野川会館で開かれ、文学ファンら約350人が文豪一家の貴重な思い出話に耳を傾けた。
参加したのは、芥川耿子(てるこ)さん、室生洲々子(すずこ)さん、萩原朔美さんの3人。
龍之介、犀星(1889~1962年)、朔太郎(1886~1942年)は1925年の同じ時期に田端で暮らし、友情を育んだ。朔太郎が田端に転入した際、芥川は友人に送った手紙で「この頃田端に萩原朔太郎来り田端大いに詩的なり」としたためている。
龍之介は犀星から庭に置くつくばいや、赤い九谷焼の鉢を贈られ、随筆「野人生計事」でそのことを紹介している。鼎談で、耿子さんは「芥川家では大切なものほど使いたくなる」と語り、鉢に空豆や正月の煮物を入れた思い出を話すと、洲々子さんは「大事にしてもらって祖父もうれしいと思う」と笑顔を浮かべた。
犀星は朔太郎の娘である小説家の故・萩原葉子さんとも家族ぐるみの付き合いがあり、朔美さんは「(母は)『今の調子で書きなさい』と書かれた犀星からの手紙を大事にしていた」と振り返った。
3人はそれぞれの祖父が残した詩の中から好きな作品を紹介。耿子さんは「ひとりあるもののうたへる」、洲々子さんは「春の日のかげ」、朔美さんは「猫」を挙げ、朗読すると会場から拍手が起こった。【原奈摘】