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解体危機の丹下建築「船の体育館」 有志が公費負担なし活用案


 世界的な建築家の丹下健三(1913~2005年)が設計を手がけ、老朽化や耐震性の問題から香川県が解体を決めている旧県立体育館(高松市、1964年完成)について、建築家や経営戦略コンサルタントらでつくる有志の団体が23日、再生・利活用に向けた新たな提案を発表した。民間資金で土地・建物を取得し、耐震改修後にホテル事業などを行うことで、行政の財政負担なく建築文化を継承できるとして、県に協議のテーブルに着くよう求めている。

耐震改修費用を縮減

 この日、高松市の建築家、長田慶太さんや、経営戦略コンサルタントの上杉昌史さん、老朽化した建造物の再生に取り組む建築家の青木茂さんらでつくる「旧香川県立体育館再生委員会」が同市内で記者会見を開いた。黒字で持続できる収益事業として、ブックラウンジ併設ホテル案と1棟ホテル案の2案を示した。

 耐震改修にかかる費用については、民間建築になることで求められる基準が下がる▽つり屋根の補強に新技術を導入▽耐震性について3次元解析を導入――することにより、これまでに想定されていた18億円から6~10億円に縮減できるとした。その上で、宿泊事業者や不動産ファンドの参画を得て、民間で土地・建物を取得する構想を示し、30億~60億円と見込む初期投資額の調達には「めどが立っている」とした。

 施工や融資には地元の工務店や金融機関の参加を想定し、雇用創出など年間3~7億円の経済効果を生むと主張。県の財政負担なしで建築の文化的価値を保存することができ、長期的には周辺施設との回遊性が高まって県のブランド価値が向上するとの見通しを示した。

 また、県が、建物西側の道路が大規模地震発生時の緊急輸送路に指定されており「耐震性確保が急務」としている点については「大地震時に建物が傾くことはあっても、道路を塞ぐような倒れ方をするとは考えられない」(青木さん)と指摘した。

県は8月ごろ解体工事の入札予定

 旧県立体育館は、和船を思わせる独特の造形から「船の体育館」とも呼ばれ、ケーブルで屋根をつり下げる「つり屋根構造」で柱のない大空間を実現している。タイプは異なるが、同年に完成した同じく丹下建築の代々木競技場(東京都渋谷区)=国重要文化財=と共に、日本最初期のつり屋根構造の建造物だが、2014年に耐震改修工事の入札が不調に終わり閉館した。

 21年には県教委が「サウンディング型市場調査」で民間事業者から活用・改修案を集めたが、県の財政支援なしでは運営が難しいと判断して採用には至らなかった。県と県教委は23年に「苦渋の決断」(池田豊人知事)として解体方針を表明。25年3月には解体工事費約10億円を盛り込んだ予算案が県議会で可決され、解体工事の入札が8月ごろに予定されている。

 長田さんらは「解体という判断の前提条件が変わった。県は再検討の協議に応じてほしい。税金の使い道の問題でもあり、広く県民に関心を持ってもらいたい」と訴えている。【森田真潮】

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