
国内有数のコメどころ山形県鶴岡市で7日、農家の代表者らが参加する市農業振興協議会総会があり、政府が打ち出したコメの増産方針を巡り出席者から「生産者は置き去り」「根拠が何もなく無責任」などと批判が相次いだ。
総会には地元農協や土地改良区の関係者、農家ら計約50人が出席した。東北農政局の担当者がオブザーバーとして参加し、今年4月末時点で全国の農家の主食用米の作付け意向が、昨年比40万トン増の719万トンに増える見通しを示した。その後、出席者が「コメどころにとって大きな問題だ」と質問に立ち、来年度も増産していくのかどうか早急に詳しく説明するよう求めた。
東北農政局の担当者は「増産の形で進んでいる」と答えた上で、「(生産に時間がかかり急に増産することが難しい)種もみの問題などさまざまなクリアしなければならない課題はあると思う」と説明。「政府に現場の声を伝え、丁寧に情報収集しながら進めていく」と理解を求めた。
総会終了後に取材に応じた専業農家は「『増産』ばかり独り歩きしている。備蓄米の追加放出で民間在庫が適正とされる水準を超過して米価が大幅に下落したらどうするのか。農家の所得補償まで整理してから増産などの方向性を打ち出してほしい」と話した。
政府は今年4月、今後5年間の農政の方針を示す「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定。コメの生産量を2023年の791万トンから30年に818万トンに引き上げる方向性を打ち出した。【長南里香】