
日本周辺の海域で潜水艦の警戒監視などを担う海上自衛隊のP1哨戒機について、会計検査院が2019年度から23年度までの可動状況を調べたところ、一定数が不具合などで運用できず、制約なく任務を行える機体が限られていたことが判明した。検査院は27日公表の報告書で、P1の可動状況を「低調」と指摘。防衛省に改善を求めた。
P1は、1970年代に防衛省が導入した米国製哨戒機P3Cの後継機として、防衛省と川崎重工業、IHIなどが共同開発した国産機。開発・運用は国内の技術力を結集した「一大プロジェクト」とされ、91年度から23年度にかけて総額1兆7766億円の国費が投じられた。防衛装備庁は54年度の運用・維持終了(想定)までの経費を4兆907億円と試算(23年度時点)している。
自衛隊機の可動状況を検査院が調べて公表するのは今回が初とみられる。調査は鹿屋、厚木の2航空基地に配備された35機を対象に実施。報告書は可動状況に関する具体的な数値を示してはいないが「低調」の要因として、エンジンの一部素材の腐食による性能低下▽搭載する電子機器や武器などの不具合▽交換部品の調達期間の長期化――を挙げた。
P1は海上を低空飛行する際、海水の塩分を含む空気がエンジンに取り込まれて部品に腐食が生じ性能が低下するほか、電子機器の一部が継続的に使用できない不具合や、搭載する武器と機体の連接に関する不具合などが発生。検査院は「原因分析の結果を設計に反映させるよう検討する余地がある」「開発段階で仕様の検討が不十分だった可能性がある」などとした。
また、交換部品について、各部隊の緊急請求から調達完了までに1年以上を要するケースが全体の約3割に上るなど「慢性的に不足」と指摘。より効率的、効果的な調達方法を検討する必要があるとした。
P1を巡っては、23年版防衛白書に「部品の在庫の不足などにより一部が一定期間以上、非可動となっている」との記載がある。
防衛省の担当者は「すでに改善には取り組んでいるが、会計検査院の指摘を真摯(しんし)に受け止め、P1の可動状況の最大化に努めていく」と話した。【山田豊、松浦吉剛】