
米国によるイラン核施設攻撃を受けて、英国、フランス、ドイツの首脳は22日に共同声明を発表し、「我々の目的は引き続き、イランの核兵器獲得を阻止することだ」と述べた。英国が攻撃に理解を示す一方で、フランスが懸念を示すなど3カ国内にも温度差があり、米国への支持も批判も明言しない「玉虫色」の文言で評価を避けた形だ。
3首脳の協議後に発表された共同声明では「イランの核兵器保有は決して許されない」と従来の立場を強調。米国への報復を検討するイランには「地域を不安定化させる行動をこれ以上とらないよう求める」とくぎを刺した。
英仏独は20日にイランとの外相会談を開くなど、緊張緩和に努めてきた経緯がある。共同声明ではイランに「核開発に関する全ての懸念に対処する合意に向けた交渉への参加」を要請し、英仏独も外交的解決に貢献する意思を示した。米国やイスラエルに自制を明確に求める文言はなかった。
共同声明の文言は、今回の攻撃に対する英仏独の温度差を反映している。
フランスが共同声明の発表に先立ち、米国の攻撃に「懸念」を表明していた。攻撃計画への関与を明確に否定して、当事者には自制を促していた。
一方、英国のスターマー首相は「イランが核兵器を開発することは決して許されない。米国はその脅威を和らげるために行動した」と米国に理解を示した。英国は事前に攻撃を通知されていたが、攻撃には関与していないとも説明した。
メルツ独首相は米国への支持や批判は避け、「イランは直ちに米国とイスラエルと交渉し、紛争を外交で解決するよう求める」としていた。
共同声明は3カ国の「最大公約数」を対外的に示したが、米国の攻撃に関する評価は一致していないため、明文化を避けたとみられる。
英仏独は米中露とともに、2015年にイランが核開発を制限するのと引き換えに対イラン制裁を緩和する核合意を結んだ当事国でもある。1期目の18年に核合意から一方的に離脱したトランプ米大統領にも、その後ウラン濃縮を再加速させたイランにも不信感を抱いている。
ただ、イランは欧州を射程に収めるミサイルを持っており、核兵器保有に至った場合、欧州の安全保障への脅威が一段と増す。イランに核兵器保有を許せば、中東の他の国が核開発を進め出す懸念もある。
核合意が形骸化し、外交によってイランに歯止めをかけるのが難しくなる中、米国やイスラエルの攻撃にはイランの核開発を少なくとも遅らせる効果がある。メルツ独首相がイスラエルのイラン攻撃を「汚れ仕事をしてくれた」と評したのが、欧州側の本音とも言える。【ロンドン福永方人、ベルリン五十嵐朋子】