
24年の選挙では、動画が大きなうねりを生んだ。現職の小池百合子氏と蓮舫氏の一騎打ちとみられていた都知事選で、ユーチューブで知名度を得て、SNSを積極的に活用した石丸伸二氏が165万票超を獲得。立憲民主党の全面支援を受けた蓮舫氏を上回った。急速な支持の広がりは「石丸現象」とも呼ばれた。
SNSを用いた情報収集・分析などで定評のある報道ベンチャー「JX通信社」(東京都千代田区)は、24年の都知事選で、各候補者の支持層ごとに支持する上で参考にしたメディアを調査した。同社の米重克洋代表取締役によると、小池氏と蓮舫氏の支持層で「ユーチューブを参考にした」と回答したのは1割程度だったが、石丸氏の支持層では5割近くと突出していた。石丸氏支持者に動画の浸透が顕著だったことが分かる結果と言える。
SNSとひとくちに言っても「X」などテキスト主体のものも多い。ただ、米重氏は「テキストよりも動画の方が視覚的にも聴覚的にも情報量が多いという感覚が(受け取る側に)ある。通信回線などの進化でそういったコンテンツがストレスなく視聴できるようになったことが動画メディア勃興につながっており、それが間接的に今の政治風景を作っている」と指摘する。
93年に自民党が下野して誕生した細川護熙内閣は、報道番組で司会をしていた久米宏氏、田原総一朗氏に代表される当時のテレビの政治に対する影響力の強さから、「久米・田原連立政権」などとやゆされることもあった。米重氏はこう言う。「今、ユーチューブでそういう時代が来ているのでは。(有名政治家もこぞって出演する人気ユーチューブチャンネルの)『ReHacQ(リハック)』の高橋弘樹さん(プロデューサー)とかは、もしかすると『令和の田原総一朗』なのかもしれない」【玉井滉大】