
シャープは12日、液晶パネルを生産する亀山工場(三重県亀山市)の第2工場を、2026年8月までに鴻海(ホンハイ)精密工業に売却すると発表した。同工場で生産されたテレビは「世界の亀山モデル」として市場を席巻したが、その後は採算性が悪化した。
亀山工場は04年に稼働。液晶パネルからテレビの組み立てまでを一貫生産する工場は日本の高品質なものづくりの象徴とされ、シャープの知名度向上に貢献した。
だが、近年は中国や韓国勢との競争が激化。第2工場はスマートフォンやパソコン向けに移行したが、中小型パネルでも苦戦を強いられ、業績を圧迫した。23年3月期連結決算からは2年連続で赤字に陥り、24年5月にパネル事業の構造改革を発表。亀山工場の第2工場は生産能力を縮小していた。
シャープが12日発表した25年3月期連結決算は、本業のもうけを示す営業損益が273億円の黒字(前期は203億円の赤字)で黒字に転換。売上高は前期比7%減の2兆1601億円、最終(当期)利益は360億円だった。
オンラインで記者会見した沖津雅浩社長は、液晶パネル事業について「固定費の大幅削減に取り組み、高付加価値商材に集中する」と説明。亀山工場の第1工場は、車載向けに注力していく方針を示した。
また、テレビ向けの大型パネルを手がけていた堺工場(堺市)の関連施設をソフトバンクなどに売却したことに伴い、26年3月ごろをめどに、本社を堺市から大阪市中央区に移転すると明らかにした。【小坂剛志】