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「防ぎようがない」 小学校侵入・暴行事件で浮かぶ学校防犯の難しさ


東京都立川市の小学校で教職員が負傷した事件で、逮捕された2人は児童の母親の知人だった。彼らは無施錠の門と出入り口から校舎内に侵入したとみられている。事件を受け、多くの学校で施錠の厳格化が求められる一方、保護者を拒むことが難しく、実現は困難な状況にある。文部科学省のガイドラインは示されているが具体的な施策は明確でない。防犯カメラやインターホン設置の学校は過半数だが、警備員の配置は少なく、現場の教職員に負担がかかっている。この事件は学校と保護者のコミュニケーション不足が原因とされ、今後の対応に注目が集まっている。

 東京都立川市の市立第三小学校で教職員5人が負傷した事件で、暴行容疑で逮捕された容疑者2人は、この小学校に在籍する2年生の母親の知人らだった。

 2人は母親から連絡を受けて無施錠の門と出入り口から校舎内に入ったとみられる。

 出入り口を全て施錠すれば外部からの侵入は防ぐことができるが、施錠の徹底が難しい側面がある上、保護者の訪問は拒めない。

 事件は学校現場に難しい問題を突きつけている。

 「同じような手法で来られたら、いくら施錠を強化しても事件は防げないと思う」。事件後、都内のある公立小の校長はこう漏らした。

 立川市教育委員会によると、事件が起きた小学校では、通常児童が出入りする門には門扉があり、かんぬきで固定されていたが施錠はしていなかった。

 児童間のトラブルを巡って保護者が学校側と話し合いをし、終了後しばらくしてから母親が男性2人を連れて来校。無施錠の門から敷地に入り、無施錠の出入り口から校舎内に入った可能性が高い。

ガイドライン「施錠すべき」明示せず

 文部科学省は、各学校が作成する「危機管理マニュアル」の「評価・見直しガイドライン」で不審者対策として校門や出入り口の施錠を例に挙げているものの、施錠すべきとは明示していない。

 校門に鍵を付けた上で登下校時のみ解錠し他の時間帯はインターホンで来校者を確認するケースや、かんぬきや門落としで門を固定しつつ来校者が自ら開門できるケースなど、実態はさまざまだ。

 立川市でも一部の小学校では門に電子錠を付けていたが、施錠に関するルールは定めていなかったという。

 遅刻・早退する児童、給食や教材の配送への対応など、校門を開ける機会は登下校時間帯以外にも多いことが要因といい、来校者が来るたびに解錠すると教職員の負担は増す。

 冒頭の校長は「遅刻する子は近年増えていると感じるが、簡易な鍵でも閉めた門の前で開け方が分からず泣いている子もいる。かといって、教職員が張り付いて解錠している余裕はない」と話す。

 その上で「保護者を名乗られたら入校は拒めない。入校証を貸し借りされたら第三者の侵入は防ぎようがない」と話した。

警備員の配置は8%

 校舎への出入りをどのように制限するかも課題がありそうだ。

 玄関近くに事務室や職員室がある学校の場合は、出入りする来校者に入校証を渡し、不審な言動がないかを確認することも可能だ。

 ただ、校舎にはさまざまな出入り口がある。今回の事件について市教委は、容疑者側が教室棟と体育館をつなぐ渡り廊下の出入り口から校舎に入ったとみている。

 児童が頻繁に使う通路で施錠はされていなかったといい、校舎の構造を知っていた容疑者が常時開放されている出入り口を狙った可能性もありそうだ。

 文科省が実施している学校の安全管理の取り組み状況調査によると、最新の2023年度時点で、不審者侵入防止対策として玄関にインターホンを設置している学校は60・2%、防犯カメラを設置している学校は64・6%だった。

 立川市でも防犯カメラは設置していたが、モニターに容疑者らが映っていたかどうかについて市教委は「確認しているかどうか含めて不明」としている。

 警備員を配置している学校は8・0%にとどまっており、9割超の学校では不審者対応を教職員が担っている状況だ。

 今回のケースでは、学校と保護者の話し合いのもつれが事件につながったとみられている。

 保護者対応は教員の多忙化の要因の一つとも指摘されており、文科省や自治体は負担軽減の観点から弁護士やカウンセラーなど専門職の積極的な介入を促すなど、対策を強化している。

 事件を受け、ある文科省幹部は「学校との話し合いが突発的なものだったのか継続的になされていたものだったのか、どのような内容だったのかについても注視していきたい」と話した。【斎藤文太郎】

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