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「懇親会で女性は世話係」慶大卒の女性が地方移住で直面した格差


東京から東海地方へ移住した伊藤直子さんは、地域の行事での男女の扱いの違いに違和感を抱いた。地域の男性は中心的役割を担い、女性はサポート役とされる風潮が根強く、女性は大切にはされているが平等には扱われていない。こうした固定的な性別役割意識が、女性の地方離れを促進していると直子さんは指摘する。地方では仕事の選択肢が限られ、その中で男女の役割分担がはっきりしていることが多い。直子さんは2020年に起業し、男女平等を実施する会社を夫と共に運営している。

 地域であった行事の後、近所の人々が参加して和気あいあいと打ち上げが行われた。だが、東京から東海地方の山間部へ、13年前に移住してきた伊藤直子さん(仮名、40代)は会場に入るなり、首をひねる光景に出くわした。

 男性5、6人で一つの机を囲んでいるのに対し、女性は同じサイズの机一つに10人以上がひしめくように座っていた。また、別の日の地域の懇親会では、配膳は女性の役目とされていた。せっかくだからと自分は酒を飲んでいたが、ほかの女性が加わることはない。

 「意図的ではないにしても、女性は世話係と位置づけられ、大切に対等には扱われていない。居心地が悪いと思う人は地域を出ていくと思います」。直子さんはそんな違和感を抱いたという。

 「地域の人は皆温かく、良い人。女性を虐げようという意識はまるでありません」と直子さんは解説する。「以前からそういうものだったから、今も続いているだけなのです」

憧れ抱いて移住

 雄大な自然の中で過ごすゆとりある暮らし。直子さんは、そんな憧れを抱いて移住した。慶応大を卒業後、都内の複数の企業で営業やマーケティングの業務に従事。年収はおおむね600万円を超えており、仕事を通して現在の夫とも知り合った。別の地方の出身で、進学を機に上京したが、元々東京での喧騒(けんそう)を離れて地方で暮らすことに関心があった。

 移住してから職探しをした。地方では仕事の選択肢が狭まることは理解していたつもりだったが、経験を生かせる仕事は見つからなかった。

 男性が中心的に働き、女性はそのサポート役。東京では経験しなかったそうした地域の風潮は、その後もさまざまな場面で出くわした。

 飲食店の店主が新たにスタッフを募集していると聞いて、ある男性を推薦してみた。すると、「男性に払えるほどの給料は用意できない」と返ってきた。直子さんは「『同じ賃金で男性は雇えないが女性は雇える』と無意識に考えていることに驚いた」という。

 また、自分の能力を生かせる仕事をしようと考えていた時、その仕事関連の用事で別の地域を訪れた際には、相手から「旦那さんの晩ご飯はどうするんですか?」と心配された。

黙って出ていく女性

 地方から、若い女性の流出が止まらない。内閣府によると、東京圏への人口一極集中が進んでおり、特に、進学、就職などの節目にある若年女性の転入超過数が同世代の男性を上回る傾向が続く。

 地域には、仕事でも、暮らしの中でも昔ながらの固定的な性別役割意識が根強く残る。直子さんはこうした風潮こそが、「女性の流出を招く一因になっている」と指摘する。

 言いにくい空気があるわけではない。でも「おかしい」と声を上げる人もいない。「自分の立場が悪くなる可能性があることは安易に言えないから。事情があって、出ていけない人もいるはず。出ていく人は黙って出ていくんです」

 直子さんは、2020年に起業し、共同代表の夫と共に自宅にオフィスを構えた。仕事内容、賃金はもちろん男女同等だ。【大原翔】

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