
園児への虐待が昨年発覚した栃木市都賀町の認定こども園「都賀幼稚園」の保育を巡り、園長らによる別の不適切行為を告発した元職員の会の証言について、園側は「ないことをあったと抽象的に言った」などと全面否定する調査報告書をまとめ、市に提出した。一方、支援が必要な園児に対する感情的な対応、園児のひじを脱臼させた事故など新たな不適切事案4件を明らかにした。
調査は、元職員の会による1月の記者会見を受け、独自に実施した。会が告発した事例のうち、発達支援が必要な園児の頭を拳でたたいたり、顔を踏んだりした▽「ハウス、お手、おかわり」など犬に対するような言葉を園児に使った▽職員不在の部屋に園児を連れ去った――など7例について、見聞きしたかどうかを在園する全教職員から聞き取った。
その結果、現場を見たり、元職員から事例について聞かされたりした職員はいなかった。園側は、調査事例について、危ない行為を止めることはあったが、拳でたたいてはいない。園児が、しがみついた園長の足を自分の顔に近づけたことはある▽職員や園児が犬のまねをして遊んだことはある▽感情の高ぶっている園児を、使っていない部屋の前に連れて行き、言い聞かせることはある――などと釈明し、「(指導や遊びなどの)行為をいじめや暴行にすり替えた」と反論した。
一方、新たに明らかにした不適切事案は、①腕を引っ張り、ひじを脱臼させた(2015年)②口に物をくわえたまま行動させ、口内をケガさせた(17年)③食物アレルギー児に除去食ではなくアレルゲンを含むおやつを食べさせた(22年)④支援が必要な園児に感情的になる場面があり、園児が怖がって部屋に入りたがらないことが頻繁にあった(同)――の4件。いずれも今回の独自調査の中で確認したという。
園は7日、調査報告書を市に提出。また、保護者に対しては、ほぼ同内容の文書を2月21日付で送った。園が再発防止策として挙げていた第三者評価については「機構側から契約解除があった」と断念を伝え、中立の立場で虐待問題を調べる第三者委員会の設置についても「現場の状況を踏まえ行わない方針」としている。
一方、指導監督する行政側は、市による特別監査に加え、市が県に協力を求め、事実上の合同再調査に入っており、現職教職員に加え、園の調査では除外された元職員も聞き取りの対象としている。【太田穣】