
フィリピンのドゥテルテ前大統領が推し進めた薬物犯罪対策「麻薬戦争」を巡り、同国大統領府は11日、訪問先の香港から帰国したドゥテルテ氏に対し、国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状を執行したと発表した。ICCが人道に対する罪で逮捕状を発行し、国際手配していたという。
地元メディアによると、ドゥテルテ氏は9日、香港で開かれた出稼ぎ労働者との政治集会に参加。11日にマニラの空港に到着したところを拘束された。大統領府は、同氏の健康状態は「良好」としている。
ドゥテルテ氏は南部ダバオ市長時代から、薬物密売人らに対し、裁判なしで殺害することも辞さない強硬姿勢で臨んだ。2016年の大統領就任後は超法規的な取り締まりを国レベルでも実行し、6年間の任期中に少なくとも6600人が死亡したとされる。
ICCは18年、多数の容疑者を超法規的に殺害した疑いで予備調査を開始したが、ドゥテルテ前政権は19年にICCを脱退。しかしマルコス政権は、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて拘束の要請があれば「義務を果たす」と表明していた。大統領府は11日朝、ICPOを通じて逮捕状を受け取ったという。
ドゥテルテ氏は逮捕後、空軍基地に拘留されている。ドゥテルテ氏の家族は、同氏が基地内とみられる場所で「私がここにいる法的な根拠を示してほしい」などと話す動画を公開した。同氏の代理人弁護士は、フィリピンがICCを脱退していることなどから「逮捕は違法」と主張している。【バンコク石山絵歩】