
島津製作所(京都市)は5日、100億年に1秒しか狂わない、世界で最も高精度の時計「光格子時計」を発売すると発表した。同社によると、光格子時計の商用化は世界初。地殻変動の観測や、高精度な測位システムなどへの活用が期待され、国内外の研究機関などを対象に約5億円で受注する。
光格子時計は香取秀俊・東京大教授が2001年に考案した。特殊なレーザー光で作った格子状の空間にストロンチウム原子を閉じ込め、原子の振動回数を測定して時間を刻む。現在の「秒」の基準となっているのはセシウム原子の振動を基にしたセシウム原子時計だが、光格子時計はその100倍以上も精度が高い。国際機関は30年に秒を再定義する予定で、次世代の「秒」の定義の有力候補となっている。
島津製作所は17年から東大と共同開発を始めた。今回発売される光格子時計は幅114センチ、高さ109センチ、奥行き65センチ、重さ200キロ。これまで開発してきた試験機から、同社が強みとするレーザーシステムを改良して約4分の1の小型化に成功した。
より正確に時間を刻むことでうるう秒などの時間の補正が不要となる。複数台をネットワークのようにつなぐことでリアルタイムでの測位や測地も可能になり、天文学の研究にも役立てられる。すでに国内外の研究機関から問い合わせがあるという。
5日に開かれた記者会見で、開発に携わった島津製作所基盤技術研究所先端分析ユニットの東條公資・副ユニット長は「将来の社会基盤のコア(核)になる可能性を秘めた製品」と商用化の意義を強調した。【田中韻】