
大阪府岸和田市の永野耕平市長(46)が、女性との不適切な関係などを巡って市政を混乱させたとして、岸和田市議会(定数24)は17日、永野氏に対する2度目の不信任決議案を可決した。永野氏の妻で市議の紗代氏(38)は、地方自治法の規定により退席し、他の23人全員が賛成した。永野氏は同日付で市長を自動的に失職し、市長選は3月下旬か4月上旬に実施される予定。
永野氏は不信任決議の再可決後、報道陣に対し、市長選への立候補の意欲を示したうえで「前向きに検討したい」と述べた。他にも擁立に向けた動きがある。
不信任決議は「岸和田市は、大混乱で異常事態と言わざるを得ない。市長は大義なく議会を解散し、莫大(ばくだい)な市民の血税を使ったことは言語道断」などと、永野氏を厳しく批判する内容。最大会派・公明党の岩崎雅秋市議が提出者となり、共産党、大阪維新の会、無所属の会派などの20人が賛成者として名を連ねた。採決では烏野隆生議長ら2人を含めて計23人が賛成票を投じた。
地方自治法には「除斥」という規定があり、議員は本人や家族と直接の利害関係にある議事に参加できない。紗代氏は不信任決議が提案された段階で退席した。永野氏と紗代氏はともに、直前までこの規定の存在を知らなかったという。
永野氏本人は議場で、厳しい表情で採決を見守った。閉会後に報道陣に対して「決議の内容には『違うな』と思う点はある。不信任は民意であり、重く受け止めたい」と述べた。市長選への出馬の意思を問われると「大好きな岸和田のために、引き続き頑張りたい」と述べた。
永野氏は、不適切な関係を続けていた大阪府内の女性から損害賠償訴訟を起こされ、謝罪して解決金500万円を支払う内容で、2024年11月に和解した。同12月、所属していた大阪維新の会から離党勧告の処分を受け、離党した。
市議会が同月、1度目の不信任決議を賛成20、反対4で可決したのを受け、永野氏は「不信任決議に大義はない」などとして議会を解散した。市議選は25年2月2日に投開票され、永野氏に対する2度目の不信任決議に賛成する意向の議員が大半を占めた。
地方自治法などによると、解散に伴う選挙後初めての議会で3分の2以上が出席して不信任決議案が過半数の賛成で再可決されれば市長は自動的に失職し、50日以内に市長選が実施される。
岸和田市選管は、市長選にかかる費用を5000万円以上と見込む。人件費や資材費の上昇、投票所入場整理券の郵便料金の値上げなどの影響を受けるため、前回選(22年1月)の4437万円を超えることが確実だ。25年2月2日の市議選の費用は9000万円を超える見込みで、永野氏を巡る一連の問題に伴う選挙費用は、合計で1億5000万円を超える可能性がある。
総務省のまとめによると、市町村の首長が不信任決議の再可決により自動的に失職したのは、23年度までの10年間で5件あった。
18年には群馬県みなかみ町長(当時)が、セクシュアルハラスメント疑惑で町政への信用と信頼を大きく失墜させたとして、22年には富山県舟橋村長(同)が村職員間のパワーハラスメント問題に対処しなかったとして、それぞれ議会から2度の不信任決議を受けた例がある。【中村宰和、藤河匠】