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北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさん(行方不明時13歳)の母早紀江さん(89)が17日、有本明弘さんの死去を受け、川崎市内で記者会見を開いた。横田さんは政府に対して「なんでこんなに動かないんですかという思いです」と拉致問題が進展しない現状について憤りをあらわにした。
拉致被害者の家族らは全被害者の即時一括帰国を要望している。横田さんは政府に「具体的なことを考えてくれないと困る」と求めた。
有本さんは14日に老衰で死去。政府が認定した未帰国の拉致被害者12人のうち、親で存命なのは横田さんだけとなった。横田さんは「いよいよ1人になってしまった。むなしい思いだ」とし、「生きている間できるだけのことはしたい。できるだけのことはする。それだけです」と話した。
横田さんが有本さんの死去を知ったのは16日。「(恵子さんと)一目会わせてあげたかった。本当にこれだけ頑張ったのに。写真だけでも見せてあげたかった」と述べた。
有本さんと最初にあったのは、1997年3月の拉致被害者家族連絡会(家族会)を結成した時で、「こんなに長い年月かかるとは思っていなかった」と話した。
有本さんについては、「勉強家で、熱心な方だった。いつもいろいろな話しをしてもらった。飾らない方で、本当に一生懸命頑張っていらっしゃった。本当にかわいそうだ」と話した。
有本さんの三女恵子さん(行方不明時23歳)は1982年4月、英ロンドンへ語学留学のため渡航。83年10月、デンマークから本人名義の手紙が実家に送られた後、行方が分からなくなった。北朝鮮に拉致されたとされる。
横田さんの長女めぐみさんが行方不明になったのは、中学1年生だった77年11月15日。当時一家は新潟市で暮らしており、めぐみさんはバドミントン部の練習を終えて下校途中に行方が分からなくなった。【木下翔太郎】