
大阪府岸和田市議会(定数24)は17日午後、永野耕平市長(46)への2度目の不信任決議案を提案された。決議案は間もなく採決され、賛成多数で再可決される見通し。永野氏は同日付で自動的に失職することが確実視されている。
市議会には先の市議選で初当選した妻の紗代氏(38)が名を連ねるが、夫の進退がかかる採決には参加できず議場に入れない。どうしてなのか。
「子ども5人を育てていて、母として子育て中の思いや経験を生かそうと立候補を決意した。夫は関係ありません」
市議会の解散に伴う市議選の告示が1週間後に迫った1月20日、紗代氏は市内で毎日新聞を含む複数のメディアの取材に応じ、自身の「方針転換」の理由をそう語った。
異例の市議選が実施されることになったのは、永野氏が2024年12月20日、市議会から不信任決議を受けたからだ。
性的関係にあった大阪府内の女性から損害賠償を求める訴訟を起こされ、和解したことが表面化した永野氏。市議会は「市政は大混乱の異常事態で、市長の責任は重大だ」として、「退場」を突きつけた。
決議を受けた永野氏はクリスマスイブの24日、地方自治法のルールに基づき、自身の私的な問題で議会解散に踏み切る異例の決断をする。直後に記者会見を開き、「決議内容はまったく理解できず、大義はない」と訴えた。
この会見に同席していたのが紗代氏だ。緊張した面持ちで永野氏の横に座り、夫への思いについて「変わらず大事な家族の一員です」と報道陣に説明した。
そして、質問が市議選への出馬の可能性に及ぶと、「考えていない」と答えた。
しかし、社会福祉士として児童福祉団体の事務局長を務める実績や子育ての経験を市政に生かしたいと、その後に一転して出馬を表明。2月2日に投開票された市議選で初当選を果たした。
市議選は12月の決議に賛成した前職20人は全員が当選し、2月定例会を迎えた17日、永野氏に対する2度目の不信任決議案が提案されることになった。
市議会の解散に伴う選挙後初めての議会で3分の2以上が出席し、不信任決議案が過半数の賛成で再可決されれば、市長は自動的に失職する。50日以内に市長選が実施される。
夫の進退が判断される議案だが、決議案の審議中は紗代氏が市議会議場に入ることは許されない。
審議や採決に加われない根拠は、地方自治法117条の「除斥」と呼ばれる規定だ。
条文は「普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、自己もしくは父母、祖父母、配偶者、子、孫もしくは兄弟姉妹の一身上に関する事件」について、その議事に参加することができないと定めている。
議会の同意があれば参加や発言が認められるとも記されているが、今回は「直接の利害関係者は原則として除外」とするこの規定が適用された。
紗代氏は決議案の提案前に取材に応じ、「採決に参加できないのは法律なのでしかたないが、もっと早く教えてもらいたかった」と話した。【中村宰和、藤河匠】