
秋田市で映像制作やミニシアターの運営を手掛ける「アウトクロップ」が、日本酒の新しいジャンル「クラフトサケ」造りに取り組む醸造家たちを追ったドキュメンタリー映画「かもしびと」を製作中だ。同社取締役で作品の監督を務める松本トラヴィスさん(26)は「日本酒が持つ可能性に挑戦する若者を後押ししたい」と語る。
クラフトサケは日本酒の発酵過程に水・米・こうじ以外の副原料を入れることで酒税法の「その他の醸造酒」として認められる新ジャンルの酒のこと。
「新しい酒蔵を立ち上げられないことにびっくりした」のが、映画を撮るきっかけとなった。松本さんのもとにある日、男鹿市で「稲とアガベ」醸造所を営む岡住修兵さんからX(ツイッター)でメッセージが届く。そこには「秋田に移住して新しく酒蔵を立ち上げたいが、新規で酒蔵を作れない規制がある。そんな現状に一石を投じたい」という思いが書かれていた。
その思いに応えようと4年前から岡住さんへの密着撮影を開始、同時に全国各地の酒蔵にも取材に赴いた。その中で、「リンネ」のブランド名でクラフトサケを醸造する京都市の今井翔也さん、「haccoba」(ハッコウバ、福島県南相馬市)の佐藤太亮(たいすけ)さんにも声を掛け、カメラを回した。
日本酒をこよなく愛する3人は、今は伝統的な製法による日本酒造りには参入できないものの、クラフトサケを通して日本酒の新しい味わい方や多様なお酒のあり方を追求していきたいと考えている。そして、過疎や高齢化の問題を抱える地域でも面白いアイデアが花開き、地元の人たちとつながっていけたらと思っている。
映画は海外の映画祭に先行して出品予定で、国内でも年内に公開する考え。松本さんは「クラフトサケにどんな可能性があるのか、海外の人にワクワクしながら見てもらいたい。日本食を合わせた文化も発信したい」と話している。
映画「かもしびと」製作委員会は、海外での情報発信や国内での広報活動のためのクラウドファンディングを広く募集している。第1段階の目標100万円はクリアし、次の目標の300万円に挑戦中。CFサイト「Makuake(マクアケ)」で19日まで受け付けている。【山本佳世子】