
旧日本軍の兵士が過酷な戦場の現実や加害行為のため、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含む「戦争トラウマ」に苦しんだことを巡り、「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」のメンバーは13日、厚生労働省の担当者に面会し、実態調査を幅広く実施するよう要望した。
厚労省はこれまでに、旧陸海軍病院を前身とする国立病院機構などに対し、兵士のカルテなどの資料が残っていないか照会し、資料を収集・分析している。戦後80年の2025年度には、調査結果を戦傷病者史料館「しょうけい館」(東京都)で展示することを目指している。
ただ、調査対象は戦傷病者と認定された人に限っている。家族が近年になって戦争トラウマだった可能性に気付いた場合は、対象外となっている。
面会では、厚労省の担当者は調査の進捗(しんちょく)状況を説明した。黒井秋夫代表は「(戦争トラウマに気づかずに)父親たちを憎んだままの人がたくさんいるはずだ。帰還兵の戦後を調べるのは国の責任だ」と求めた。
大阪市の藤岡美千代さん(65)は、海軍に所属していた父親のことを語った。父親はシベリア抑留を経て帰国すると、雨音や風音におびえ、幻覚や幻聴に苦しみ、家族への暴力を繰り返した。47歳で自ら命を絶ったといい、「なぜ父は死ななければいけなかったのか。国にはその理由を明らかにしてほしい」と訴えた。【肥沼直寛】