
中国広東省深圳市で昨年9月、日本人学校の男子児童が刺殺された事件で24日、死刑判決が出た。日本人が被害に遭った事件で、前日に続き被告に極刑が言い渡されたが、一連の事件が中国の日本人社会に与えた影響は極めて大きい。
24日朝、事件現場では多数の警察官やパトカーが目を光らせていた。少し離れた路上でも、約20メートルおきに私服警官が周囲を警戒していた。事件後、登下校時間を中心にパトロールを強化しているとみられる。
昨年6月に江蘇省蘇州市で日本人母子が襲われ、止めに入った中国人女性が殺された事件でも、1月23日に死刑が言い渡されたばかり。28日から始まる春節(旧正月)の連休を前に、スピード判決が続いた。
一連の事件の余波は続く。深圳のある日本人駐在員は「普段の生活をしている分には、治安面で大きな不安を感じたことはない」と話す一方、家族を先に日本へ帰国させることにした駐在員もいるという。
蘇州に住む駐在員の男性によると、「現場近くのマンションからは事件後、多くの日本人家族が退去した」という。最近は平穏な生活が戻ってきたが、私服警官が巡回するものものしい状況は続いている。
一連の事件では、日本人を標的にしたかどうかに注目が集まった。動機面では日本への言及はなかったとされるが「日本人であるから気をつけることは増えた」(上海の駐在員)などと不安は拭えていない。
日本政府は事件を受けて、スクールカウンセラーの派遣や、日本人学校への警備強化の支援を進めた。石破茂首相は昨年11月の習近平国家主席との首脳会談で在留邦人の安全確保を要請。習氏は「法に基づき事件を処理する。日本人を含むすべての外国人の安全を確保する」と語っていた。
ただ、事件の背景には「中国の経済失速による格差拡大といった構造的な要因もある」(日中外交筋)といった指摘もある。邦人の安全とビジネス環境をどう守っていくか、引き続き日中両国政府の課題となりそうだ。【深圳・松倉佑輔】