UNDPアフガン代表インタビュー
イスラム主義組織タリバンが実権を握るアフガニスタンで、暫定政権が女性への抑圧を強めている。8月には女性が公共の場で大声を出すことを禁止し、全身や顔を布で覆うことを義務づけた新たな法律が制定された。締め付けが強まる中、女性たちの暮らしや社会の状況について、11月中旬に来日した国連開発計画(UNDP)アフガニスタン常駐代表のスティーブン・ロドリケス氏に聞いた。
――2021年にタリバンが復権してから3年以上が過ぎました。アフガニスタンの女性を取り巻く状況を教えてください。
◆アフガニスタンでは女性と少女が非常に厳しい制約を受けています。少女たちは中等・高等教育を受けられなくなり、11~12歳になるとその先の進路はありません。公園に行くことも一定の距離を移動することも禁止されており、制限は年々厳しくなっています。
今年、女性への規制をさらに強化する「道徳法」と呼ばれる新しい法律が制定されました。公共の場で女性が声を発するべきではないとされており、多くの人々が「女性の声が社会から消えつつある」と考えています。
――活動を通じてアフガンの人々とどのような話をしますか。
◆かつて公務員や弁護士として活動していた女性たちに会う機会がありました。彼女たちは懸命に勉強して仕事を得たのですが、今は家に閉じ込められて身動きが取れない状況だと聞きました。収入を得られず、家庭内で虐待を受けるケースも少なくありません。「非常に重たい気持ちだ」という話をよく耳にします。
アフガンの女性は移動する際に男性家族の同伴を義務付ける「マハラム制度」が課せられています。法律や命令に従っているか常にチェックされ、タクシーに乗る場合でも男性家族と一緒か確認されます。絶え間ない監視が大きな不安を与えています。
――UNDPは女性主導の企業の支援をしていますね。社会にどのような影響を与えるでしょうか。
◆アフガニスタンの女性は、民間企業で働くことは許されており、UNDPは女性が経営を主導する会社の支援に携わっています。これまでに約7万5000社の支援に関わってきました。
先日、生理用品を製造している女性の経営者と会いましたが、彼女は35人の女性を雇用していました。女性が女性のために機会を創出し、ネットワークを築きます。安心感を与え、孤独感を和らげることにもつながると信じています。
――課題はありますか。
◆私たちが支援している人々の多くは農村部に住み、首都カブールやイラン、パキスタンなどの大都市に向けて、製造したカーペットやドレスなどを販売しています。
しかし、女性がビジネスをする上でもさまざまな課題があり、例えば移動する際に、(同行する男性も含めた)2人分のチケット代を払わなければなりません。差別も深刻で、商品を大幅に値下げしない限り、取引に応じようとしないという例もあります。
――女性主導の企業に対する、タリバンのスタンスはどのようなものですか。
◆タリバン(暫定)政権や商工省から私たちが聞いたメッセージは「女性が所有する企業を支援する」というものでした。しかし、女性にとっては多大なコストがかかり、困難な状況です。国際社会はアフガニスタンで起きている状況を忘れてはなりません。
UNDPは、国内のさまざまな州や地域で活動の余地を見つけ、当局と交渉して活動を可能にするよう働きかけています。一方で、人道支援についてはいかなる干渉もあってはならないと一貫して主張しています。これからも中立で独立した立場で仕事を続けたいと思っています。【聞き手・松本紫帆】