石破茂首相は4日午後、就任後初めての所信表明演説を衆院本会議で行った。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に関し、冒頭で「国民の政治不信を招いた事態について、深い反省とともに触れねばならない」と陳謝した。「国民からの信頼を取り戻し、すべての人に安心と安全をもたらす社会を実現する」と決意を示す。一方、9月の総裁選で主張していた「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」構想や、在日米軍の活動ルールを定めた日米地位協定の改定には言及しなかった。
首相はエネルギー政策に関し「AI時代の電力需要の激増」に触れた上で、「安全を大前提とした原子力発電の利活用」をしながら、「再生可能エネルギーの最適なエネルギーミックスを実現」する方針を示した。自身がこれまで取り組んできた地方創生は「成果と反省を活(い)かし再起動させる」とし、交付金を「当初予算ベースで倍増することを目指す」と訴えった。
外交・安全保障政策では、日米同盟を基軸とする姿勢を強調。「防衛力の最大の基盤は自衛官」と指摘し、生活・勤務環境や処遇の改善に向け、あり方について関係閣僚会議で早急に成案を得ると表明した。
経済・財政政策では、「賃上げと投資がけん引する成長型経済」などを掲げ、岸田政権を継承する姿勢を訴えった。
憲法改正は、首相在任中に発議を実現する考えを示すものの、国会の憲法審査会で「国民的な議論を積極的に深めていただくことを期待する」と述べるにとどめる。安定的な皇位継承も「立法府の総意」が取りまとめられるよう期待を示し、踏み込んだ主張は行わなかった。【樋口淳也】