海上自衛隊は、事実上の空母化に向けて改修中のヘリコプター搭載型護衛艦「かが」を米国に派遣し、最新鋭ステルス戦闘機F35Bを用いた運用試験を実施する。米軍の協力を得て、発着艦などに関する各種データを収集したい考えだ。かがは17日午前、広島県の海自呉基地を出港した。
運用試験は10月5日~11月18日、米カリフォルニア州サンディエゴ沖で実施する。米海軍や米海兵隊の協力の下、F35Bの垂直着陸や短距離発進の可否を確認。甲板から格納庫への機体のけん引など、運用におけるさまざまな段取りや所要時間も点検する。海自隊員のほか、2024年度中にF35B6機の配備を予定する航空自衛隊から約20人が参加する。
海自トップの斎藤聡海上幕僚長は今月10日の定例記者会見で、「広大な太平洋側を含む周辺海空域を防衛するためには、洋上でF35Bの発着艦を可能とすることが必要不可欠だ」と説明。F35Bの運用能力の獲得が「日米の相互運用性の向上に資する」とも述べた。
かがは3月末に第1次の大規模改修を終えた。戦闘機が飛び立つ際に受ける気流の影響を抑えるため甲板の先端部分を台形から長方形に変更し、高温のジェット噴射に耐えられるよう甲板に特殊塗装を施した。
防衛省は20年度以降、計約780億円をかけて、かがと同型の護衛艦「いずも」で戦闘機が運用できるよう段階的に改修工事を進めており、来年度予算の概算要求には18億円を計上。かがの第2次大規模改修は26年度以降の見込み。
一方、いずもについては21年10月3日、四国南方海域で米軍の支援を受けF35Bの発着艦試験を実施。防衛省は「日中、平穏な天候という条件下では発着艦可能と確認された」としている。【松浦吉剛】