横浜市教育委員会は23日、市立中2年の女子生徒がいじめを苦に自殺した際の対応や、教員による児童生徒へのわいせつ事件の裁判に職員を動員していた問題を巡り、法に基づく適切な対応を取らなかったとして、当時の学校教育事務所長ら5人を減給などの懲戒処分にしたと発表した。【岡正勝】
山中竹春市長は2019年に動員傍聴を許可した前教育長の鯉渕信也氏に対し、「順法精神に欠けた対応」と減給10分の1(3カ月)に相当すると指摘。生徒の自殺対応でも「組織マネジメントが不十分」と文書訓戒に相当すると厳重注意した。前教育長は謝罪し、減給分28万2000円を自主返納する意向を示しているという。
20年に女子生徒がいじめを苦に自殺した件では、弁護士らが今年4~6月、関係職員や教員を聴取。遺族の訴えに反して、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」の認定をせず、市教委が主導して学校の「いじめ認知報告書」を取り下げさせていたことが新たに判明。さらに基本調査からの「いじめ」の文言を削除するよう指導していたという。
弁護士は詳細な検討を指示しなかった教育長や教育次長の姿勢にも疑問を呈した。懲戒処分は当時の学校教育事務所長に対し減給10分の1(1カ月)で、既に退職した4人は減給、戒告相当とした。
一方、裁判に職員を動員していた問題では、弁護士の検証チームがまとめた報告書を基に処分を決めた。裁判公開の原則の趣旨に反する行為で、職務の範囲を逸脱し地方教育行政法違反に当たると結論付けた。動員の協力を依頼するなどした学校教育事務所長ら4人を戒告の懲戒処分にした。退職者2人も戒告相当とされている。
この二つの問題による処分は、文書訓戒などの人事的措置(相当を含む)を加えると延べ26人に上る。
監査請求を棄却、市教委には苦言
横浜市教育委員会が教員による性犯罪事件の裁判で傍聴を妨害していた問題で、交通費などの返還を求めた住民監査請求について、市監査委員は23日、請求棄却の決定を公表した。決定は19日付。
市教委が2019~24年度、横浜地裁で開かれた4事件の公判11回に対し、職員延べ414人を動員。傍聴時間に相当する賃金や交通費の返還措置を求め、市民から監査請求された。
決定は、出張命令について「教委の独自権限に基づくもの」と指摘。市長が交通費を支給し、給与を減額しなかったことを「違法、不当な財務会計上の行為とは言えない」として、請求を棄却した。
一方で、監査委員は、決裁権者を黒塗りした市教委の対応に「裏付けが確認できない資料もあった」と反省を促した。同時に「今後の組織風土改革に期待する」と市教委に苦言を呈した。【岡正勝】