フィリピンで狂犬病による死亡者の感染源を分析したところ、約6割が「1歳未満の子犬」だったことが、大分大の研究グループによる調査で判明した。ウイルスは感染動物の唾液に多く含まれるため、傷口をなめられても感染する可能性があるという。研究成果を公表した医学部の西園晃教授(ウイルス学)は「狂犬病がまん延する国に渡航する時は近づかないことが大切だ」と注意を呼び掛けた。
詳細は、7月8日付の国際学術誌「Frontiers in Microbiology」に掲載された。西園教授によると、狂犬病の感染源だった動物の年齢に関する研究成果が報告されるのは珍しいという。
フィリピンでは年間200~300人が狂犬病で死亡しているが、西園教授らが2019年から約3年かけ、同国の患者151人のうち、感染源の犬の年齢を特定できた例を分析したところ、約6割が1歳未満の子犬にかまれるなどして感染していた。
狂犬病はウイルスを持つ犬にかまれても、すぐにワクチンを接種するなどの対策を取れば、発症を防ぐことができる。だが、子犬の場合、かまれても比較的軽傷で済むことから、自己判断で治療を受けず、致死の可能性が高まった例が多くみられるという。
西園教授は「腕などに元々あった傷口を子犬がなめて感染することも考えられる」と指摘。このため、狂犬病がまん延する国へ渡航する際は接触を避け、かまれた場合に現地の専門外来を受診することを呼び掛けた。また、子犬へのワクチン接種のあり方などを再検討する必要があるなどと訴えた。【李英浩】