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クライミング名所で保安林伐採か 県の情報開示ミスで判明 埼玉


 クライミング名所の二子山(埼玉県小鹿野町)東岳で、一般社団法人「小鹿野クライミング協会」が伐採した木々のうち数本が過去に県が実施した保安林改良事業の区域内にあったとみられることが判明した。県は情報開示請求に対し、事業の記録は「存在しない」としていたが、黒塗り(不開示部分)を外せる状態で開示するミスにより今年1月に「存在」が明らかになった。県は「保安林伐採はなかった」との昨年10月の結論は変えないとしているが、一連の対応に疑念が深まっている。

 協会による東岳での伐採は2023年3月までに行われた。県秩父農林振興センターは一般からの通報に基づき、森林法で県知事の許可が必要とされている保安林の違法な伐採がなかったかを同6月から調査。同10月20日に現場周辺の土地所有者らの立ち会いのもとで土地境界を定め、「保安林の伐採はなかった」と結論づけた。

 一方、保安林が伐採された可能性を示しているのは「平成14(02)年度小鹿野第2保安林改良事業」の記録だ。伐採による希少種植物への影響を懸念する市民団体「小鹿野の石灰岩地域の植物保護を考える会」メンバーが23年11月末に開示請求をしたが、「存在しない」とされてきた。

 だが、同メンバーが請求して開示された文書の黒塗り処理が不十分で、パソコン上で取り外せることが24年1月に発覚。その取り外せた黒塗り部分に、同事業の記録が存在していることを示す記載があった。メンバーや毎日新聞が改めて事業記録を請求すると、今度は開示された。

 県は「当初は図面に使用された色から実際に行われた事業ではないと判断した。開示すれば業務の遂行に支障が出る恐れがあるとして、条例に基づき不開示としたが、精査した結果、図面の凡例記載やその他の記録から、実施事業と確認できた」としている。記録の存在を確認したのが1月16日で、黒塗り外し問題発覚直後だったことは「偶然の一致」と話す。

 保安林改良事業の実施範囲内で伐採が行われていれば、保安林が切り倒された可能性が高い。毎日新聞に開示された記録(治山台帳、事業精算書、事業精算書図面)から、現場近くに数本打ち込まれた「赤い杭(くい)」が、保安林改良事業の実施範囲を示すためのものであることが確認できた。

 県は毎日新聞の取材に対し、59本に及ぶ伐採木のうち数本が赤い杭の範囲内にある可能性を認めた。だが、「土地境界は関連土地所有者の同意で最終的に決められるもの」として、「保安林の伐採はない」との結論は変えず、再調査する考えもないという。県は「森林計画図を参考に、関係する土地所有者の立ち会いで、保安林や山林との境界を定めた結果だ。02年度の事業記録は境界決定の時点では実施していない記録と判断していたので参考にしていない」としている。

 こうした対応について、考える会は「『赤い杭』の存在は現場に行けば誰でも気づく。境界を示すものではないかと再三指摘したのに、県側は『分からない』で通してきた。黒塗りが外せて存在を認めざるをえなくなった。土地所有者は改良事業の存在を知らないはずだ。事業範囲内で伐採があったのだから再調査は当然だ」と話している。【照山哲史】

県の開示文書、一部が黒塗り外せる状態に

 小鹿野クライミング協会の森林伐採を巡っては、県が行った保安林に関する調査を検証するため「小鹿野の石灰岩地域の植物保護を考える会」メンバーと毎日新聞記者が情報公開請求を続けてきた。

 考える会メンバーが2024年1月10日に開示された文書の黒塗りを外せると気づき、県に通報。事情を知らないクライミング協会は同15日、「保安林伐採はない」と結論づけた文書をホームページに掲載した。

 この文書も黒塗りが外せたため、本来不開示の個人情報などが誰でも閲覧可能な状態に。気づいた考える会メンバーが同16日未明に県に連絡。県からの依頼で協会が削除するまで数時間公開された。

 県によると、黒塗りが外せる状態で開示された文書は計18件。多くは個人情報関連だが、条例が定めた「県の事務や事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」との理由で一部不開示となった文書もあり、保安林改良事業についての黒塗りも、この理由だった。

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