starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

「中国一の富豪」が愛国世論の標的に 景気悪化で庶民のはけ口?


 「中国一の富豪」とされる有名経営者が「愛国」を掲げる国内世論の攻撃にさらされている。日本や欧米の企業が、歴史認識や人権問題への対応を巡って中国でボイコットなどに遭うことは多いが、自国企業にもその矛先が向かう背景には何があるのか。長年の愛国教育の影響に加え、景気悪化で庶民に募る鬱憤のはけ口になっているとの分析もある。

 過激な愛国世論の標的になっているのは大手飲料メーカー「農夫山泉」とその創業者の鐘睒睒(しょう・せんせん)氏だ。同社の一部商品に日本風の建築物がデザインされているなどという「親日」批判に加え、鐘氏の息子が米国籍だとして反発する声がSNS(ネット交流サービス)で高まり、製品ボイコットが呼びかけられて株価が急落する事態になった。

 きっかけは2月、同じ飲料大手「杭州娃哈哈(ワハハ)集団」の創業者、宗慶後(そう・けいご)氏が亡くなったことだ。宗氏は中国の改革・開放の時代を切り開いたカリスマ経営者で人気が高い。その死を悼む機運の高まりがライバル関係にあった鐘氏や農夫山泉への反感を生み、過激な言論につながったようだ。中国の民間富豪ランキングによると、鐘氏の資産総額は4500億元(9兆4500億円)とされる。

 「中国で稼いだ金が米国籍の息子に転がり込むのか」という感情的な論調に対し、「批判は言いがかりで行き過ぎだ」「偽の愛国心に過ぎず、理性を失っている」との冷ややかな見方も少なくない。「愛国」を名目とする過激な言動にはアクセス数を稼いで収益を得ようとする狙いもあるとされる。

 ただ、景気の減速が鮮明になる中、市民の間では格差の拡大に対する不満は募る一方だ。ある中国人記者はSNSで「ネットユーザーが本当に不満を感じているのは、景気低迷に直面する自分たちの苦境に、エリート層が無関心だということだ」と指摘していた。

 中国では1月にも「愛国」ブロガーが江蘇省南京市の商業施設で、赤い丸などをモチーフにした飾り付けが「日本の国旗や旭日旗を連想させる」として警察に通報し、施設側が飾り付けを撤去する騒ぎになった。この時は主要メディアが「でたらめなやり方で企業を攻撃することは、正常な経済や社会生活を破壊する」と批判する論陣を張った。

 経済の立て直しを目指す習近平指導部は、排他的な世論の高まりによって民間企業や外資が萎縮する事態を望んではいない。一方で、1月に「愛国主義教育法」を施行させるなど、ナショナリズムを高揚させることで共産党の求心力を維持しようともしている。こうした矛盾をはらむ政治のあり方が、愛国世論の過熱が後を絶たないことの要因とも言えそうだ。【北京・河津啓介】

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.