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秋田県「人口減、日本一を食い止めろ」 魅力発信、都内に基地


 厚生労働省が2月27日に発表した人口動態統計の速報値で2023年の出生数が過去最少の75万8631人となり、加速する少子化に関心が集まっている。特に危機感が強いのは、人口減少が進む地方だ。昨年12月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した50年の地域別将来推計人口によると、秋田県の人口は20年比で41・6%減少すると予測される。同県は人口流出を食い止め、首都圏からの移住者も取り込もうと、移住と就職相談の機能を集約した拠点「アキタコアベース」を東京都中央区に開設。人口減の食い止めに懸命な秋田県の取り組みを取材した。

 昨年10月に開設された施設の正式名称は「秋田県あきた暮らし・交流拠点センター」。JR東京駅からも近い京橋地区のビル1階にある施設を2月初旬に訪れると、通りに面した部分はガラス張りで、県産木材が使われた温かみのある雰囲気の内部が、外からもよく見えた。広さは約100平方メートル。入り口付近にはゆったりとした交流スペースがあり、100インチの大型モニターで県内各地で撮影された映像が上映されていた。

 コアベースのスタッフは総勢9人。その一人で、秋田県東京事務所総務企画課の堀江琢さん(47)は「まずは来て良かったと思ってもらえる空間作りが大事。相談に来て一足飛びに秋田に行きます、とはならないので、時間をかけて丁寧に接することを心がけています」と話す。

 交流スペースでは、空き家相談会や各種就職セミナーに加え、秋田の日本酒を楽しむ会や地元のバスケ強豪・県立能代工業高の試合のパブリックビューイングなど、さまざまなイベントが年間を通じて企画されているという。奥には個別相談用のスペースがあり、5~6人の常駐スタッフが来訪者の秋田県内移住や県内での就職相談に応じている。

 この日、コアベースを訪れていたのは、「秋田地域おこし協力隊」として大館市で活動している村上瑛美さん(38)。コアベース開業前の22年、別の施設に相談に訪れたことをきっかけに移住を決めた。新たな拠点について「秋田を都内で感じられる場所。東京駅からも近いので、上京した際に気軽に立ち寄れて、古里が二つあるようです」と魅力を語る。施設内であったミニ移住相談会に参加した40代の男性は「スタッフの方が親しみやすく、相談というより楽しく雑談ができた感じ。また話を聞きに来ます」と穏やかな表情で施設を後にした。

 コアベースのスタッフはまた、秋田県主催のイベントに参加し、相談の間口を広げる活動も行っている。2月3日には秋田への移住・就職をPRする「あきたまるごとAターンフェア」が東京・竹芝の東京都立産業貿易センター浜松町館で開かれ、県内企業約70社と17市町村が参加した。館内には参加企業・自治体の相談ブースの他、雑談スペースや地元名産品の物販スペースも設けられ、のべ131人の来場者でにぎわった。

 この日、大館市の移住相談に母親とともに訪れた、千葉県内の大学で薬学を学ぶ猪野瞳さん(24)は「祖父母がいる秋田市や出身の大館市に戻るか、東京で働くか、求人条件を比較して決めたい」と地元での就職にも前向きだ。妻の出産をきっかけに実家に戻ることを考えて秋田市のブースを訪れたという会社員の高島由斗さん(25)は「いずれは、という思いでしたが、ここで就職相談に乗ってもらったことで、後押しされました」と笑顔で話した。

 23年度に秋田県に移住相談をし、実際に移住を決めた人は計417世帯で、このうち秋田県外から故郷を離れて移住する「Iターン」は194世帯。コアベース開設後だけで見ると、計172世帯が移住を決め、そのうち66世帯がIターンだった。コアベースの堀江さんによると、相談に来るのは秋田県にゆかりのある人が多いが、それ以外でも秋田に興味を持って訪れる人が少なくないという。

 堀江さんは「人口減は防げないが、減少のカーブをなだらかにするため、できることはあると思う。人口流出先となっている首都圏にあるアキタコアベースを活用し、就職や進学で秋田から出ていってしまった人たちに帰ってきてもらうだけでなく、秋田に興味を持ってくれた首都圏の方々にも移住してもらえるような仕掛けを作っていきたい」と力を込める。秋田ではまだまだ寒い日々が続くが、古里の活気を取り戻そうと奮闘するスタッフたちの思いは熱い。【榎良広】

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