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北海道銀行の巨大レリーフ、本店移転で見納め 行方に注目集まる


 北海道銀行本店(札幌市中央区)に展示されている巨大なレリーフが4月、ビルの建て替えに先立つ本店移転のため、いったん見納めになる。戦後日本の彫刻界をリードした札幌生まれの彫刻家、本郷新(1905~80)らが北海道の産業を躍動的に表現した作品で、ビルのできた60年前から親しまれてきたが、横幅40メートル超の大きさで、適切な移設先が見つかっていない。当面は分割して保管され、行方が注目される。【安味伸一】

 大通公園に面する道銀ビルディング。窓口が並ぶ1階ロビー正面の壁面で存在感を放っているのが、横幅41・0メートル、高さ3・3メートルのレリーフ「大地」だ。本郷新記念札幌彫刻美術館の吉崎元章館長は「国内で最大級。人々が自然と向き合って大地を切り開いていった営みの力強さ、農業、漁業などを表現し、ストーリーがある」と解説する。

 レリーフは本郷、岩見沢市生まれの山内壮夫(1907~75)、宮城県生まれの佐藤忠良(1912~2011)の共同制作。日本を代表する3人の彫刻家は札幌二中(現札幌西高)の同窓生で、1939年に発足した彫刻家団体「新制作派協会彫刻部」(新制作協会彫刻部に改称)の創立メンバーだ。

 なぜ、銀行に巨大彫刻が設置されたのか。道銀ビルの完成は1964年8月で、東京五輪開催の2カ月前だった。当時の島本融(とおる)頭取(初代)は、自著「私の銀行経営」(有泉社)で「北海道の産業育成こそ道銀の社会的使命であり、これを建物に表現する一つの方法として、この営業室壁面彫刻を作ることにした」と書き残している。

 鈍い金属的なレリーフは一見すると、ブロンズのようだが、道銀によると、軽量化のため、93枚のポリエステル樹脂板で構成されている。重さは銅の13分の1という。制作過程の記録映画「三人の手」によると、重厚感を出すため、複数の種類の樹脂を混ぜ合わせ、石こうの型に入れて成形された。

 道銀ビルはバブル経済崩壊後、不動産会社の所有になった。ビルを含む地区は2022年に再開発による高層ビル計画が発表され、道銀本店は移転する。レリーフは新本店への移設が難しく、道銀は文化的な見地から道と札幌市に処遇を相談したが、「場所がない」との回答だったという。

 道銀広報CSR室の坂野公紀室長は「レリーフは本店の象徴的な存在で、お客様から愛されてきたことを誇りに思う。銀行だけでなく道民の財産。また見ていただけるようにしたい」と説明する。本店移転後に樹脂板を一枚ずつ外して分割し、道銀研修施設の倉庫に保管する予定。現状での展示は現本店の最終営業日(4月19日)までとなる。

 吉崎館長は「後世に伝えようと保管を決断したことを高く評価したい。完全形での展示が望ましい」と行方を見守る。小樽市在住の彫刻家、鈴木吾郎さん(84)は「日本を代表する彫刻家たちが共同制作したかけがえのない作品。見られなくなるのは残念だ。どこかの公共スペースで展示されることを期待したい」と話している。

   ◇  ◇  

 道銀文化財団は「大地」の展示空間でクラシックを鑑賞する最後のロビーコンサートを14、15両日午後6時から開く。

 14日は三輪主恭(かずやす)さん(声楽家)、三輪栞(しおり)さん(ピアノ)▽15日は河野泰幸さん(クラリネット)、岡本孝慈さん(ピアノ)が出演。当日先着100席、入場無料。30分前に開場予定。問い合わせは財団(011・233・1029)。

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