花粉症が原因で4分の1の企業で生産性低下――。今や「国民病」とも言われる花粉症は、日本経済にもダメージを与えているようだ。
調査会社の東京商工リサーチが2月、花粉症に関するインターネット調査を実施し、4639社から回答を得た。
花粉症が業務に悪影響を「大いに与えている」「少し与えている」とした企業は計25・2%(1171社)だった。「あまり与えていない」は46・2%(2147社)、「全く与えていない」は28・4%(1321社)だった。
悪影響があるとした企業の具体的な内容は、鼻水や目のかゆみなどの症状による「従業員の作業効率の低下」(92・7%)で、生産性の低下につながっていると見られる。次いで「医療機関受診を理由とした遅刻・早退・休暇の増加」が32・2%だった。欠勤した人の業務の穴埋めのため、他の従業員の負担が増えているケースもあるという。
悪影響があるとした企業を業種別にみると、最多はアパレルや雑貨小売りなど接客機会の多い「織物・衣類・身の回り品小売業」だった。「映像・音声・文字情報制作業」や訪問介護などの「社会保険・社会福祉・介護事業」、「自動車整備業」などが続き、外出や屋外での業務が多い業種が目立った。
企業からは「感染対策のためしていた換気を花粉症の人に配慮して控えるようになった」(システム)、「顧客の前で鼻をすすったりとイメージが悪い」(営業)、「屋外作業時に集中力がそがれると思わぬ事故につながりかねない」(建設)など、衛生面や安全性の低下を懸念する声が寄せられた。
厚生労働省によると、花粉症全体の有病率は1998年が19・6%、2008年が29・8%、19年が42・5%と10年ごとに約10ポイントずつ上昇している。東京商工リサーチは「花粉症のアレルギー症状が出ていない人も将来的に発症する可能性がある。花粉症対策は、国や企業の取り組みと協力も欠かせない」とする。事態を重く見ている政府も23年5月に花粉症対策を策定し、10年後にスギ人工林の面積を2割減とすることなどを掲げている。【嶋田夕子】