愛知県東郷町の井俣憲治町長による町職員へのハラスメント問題を巡り、町議会で井俣町長が答弁する時には部長や課長が議場から退席する異常事態になっている。議会が「加害者の可能性がある町長と、被害者の可能性がある職員が同じ空間にいるのは問題」として町長と職員の分離を要請したためだ。
町議会では4日、3月定例会の一般質問があり、町議5人が質問した。最初の3人は町長の答弁を求めず、町長不在の議場で副町長や部長らが答弁した。
4人目の門原武志町議は、施政方針について町長に質問。すると、その直前に部課長7人が全員退場し、入れ替わりで井俣町長が入場した。24席ある町執行部のひな壇に座っているのは、町長や副町長ら5人だけだ。
ハラスメント問題についての追及に、井俣町長は「私の無知、不勉強が引き起こしたもの」と述べた。しかし、問題発覚後に学んだこととして、他人の行為・言動を不快に感じたり嫌悪感を抱いたりした時に「ハラスメントだ」と主張する「ハラスメント・ハラスメント」や、部下から上司に対するハラスメントなどを列挙したため、石橋直季議長が「被害者がたいへん心を痛める答弁が続いている」と言葉を挟む場面もあった。
今議会で一般質問を通告した11人のうち、町長の答弁を求めたのは、たった2人。議会運営委員会の委員長を務める水川淳町議は「町長ができるだけ議場にいないようにするため議員は町長への質問を避けざるをえず、たいへん苦慮している。一般質問は本来、トップの方策、政策について尋ねるものなのに、形骸化しかねない。この状況を作ったのは町長だ」と批判する。
ハラスメント問題を調査している町の第三者委員会は3月末までに報告書を提出する予定で、井俣町長は報告書を待ってその後の対処について判断するとしている。このため、町が今議会に提出した新年度当初予算案は、福祉などどうしても必要な事業に充てる経常経費が中心で、町長独自の政策判断が必要な事業がほぼ含まれない「骨格的予算」になっている。【荒川基従】