フィンランドで11日行われた大統領選の決選投票で、中道右派・国民連合のアレクサンデル・ストゥブ元首相（55）が中道左派・緑の党のペッカ・ハービスト前外相（65）を破り、初当選した。ストゥブ氏は3月1日に新大統領に就任予定で、任期は6年。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、フィンランドの安全保障環境が激変する中、国防力強化を訴えて大統領選を制したストゥブ氏。だが外相や首相を歴任した政治家として、もともとはロシアとの関係も重視する立場だった。
2022年2月の侵攻開始後、かつて「旧友」とまで呼んだラブロフ露外相にSNS（ネット交流サービス）でメッセージを送った。「この狂気の沙汰を止めてほしい。『彼』を止められるのは、あなただけだ」。彼とはもちろんプーチン露大統領の意味だが、ラブロフ氏からは1分後、むなしい返事があった。「彼とは誰だ。ゼレンスキー（ウクライナ大統領）か？ バイデン（米大統領）か？」
このやり取りの後、「ロシアとの関係はもう戻れない一線を越えた」と確信した。
その後、フィンランドは長年の中立外交から転じ、23年に北大西洋条約機構（NATO）に加盟。自身も今回の選挙戦ではロシアの脅威を念頭に、核兵器の国内持ち込みを「許容する」とまで述べた。
1968年4月、首都ヘルシンキ生まれ。ゴルフのプロを目指し、奨学生として米ファーマン大に留学。だが夢はかなわず、帰国後は政界入りし、欧州議会議員や外相などを経て14～15年に首相を務めた。
SNSによる投稿が何度も「炎上」した経験を持つが、「リスクは承知しているが、発信しないよりましだ」との信念を持つ。欧州メディアでは「目立ちたがり屋」と報じられている。
趣味はトライアスロン。英独仏など5カ国語を話す。英国人で弁護士の妻との間に子供2人。【ロンドン篠田航一】
