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エクモ残り1台…綱渡りのコロナ禍、実録の140ページ 埼玉県医師会


 埼玉県医師会は、新型コロナウイルス感染症への対応を振り返った記録集「COVID―19の四年間 埼玉県医師会の挑戦と克服」を発刊した。医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さが露呈した感染拡大初期、病床が逼迫(ひっぱく)し入院待機が続出した綱渡りの夏、重篤患者に使用する人工心肺装置が県内に残り1台しかなくなった日――。コロナ禍で奔走した医師らが苦闘の日々と教訓をつづった。【鷲頭彰子】

140ページにわたり窮状記録

 記録集はA5判140ページ。重症患者の診療・入院支援、宿泊療養施設での診察、PCR検査センターの設置などに携わった医師らが執筆し、コロナと闘った4年間を年表と共にまとめた。

 患者の入院調整などを担う県調整本部長だった星永進氏は、デルタ株が猛威を振るい、東京オリンピック・パラリンピック開催と重なった「第5波」のさなかだった2021年8月28日に直面した厳しい状況をつづった。

 当時は国内でのワクチン接種が始まって半年あまり。若い世代にワクチンが十分行き渡らない中、未接種の20~60代に重症化が相次いだ。人工心肺装置「ECMO(エクモ)」を装着した県内の重篤患者は最多の160人を超え、エクモが残り1台となるまで逼迫した。

 入院調整も困難を極めた。中等症Ⅱの目安となる血中酸素濃度93%以下を入院の対象としていたが、同日は80%台の40人が自宅で待機。在宅で使える酸素の手配を試みたが、明け方までに確保できたのは2人分だけ。これを教訓に酸素ステーションの設置が進んだという。

 20年春からの第1波についても、専用病床の確保が進まず、1日あたり10人程度の入院調整に苦心したことを記した。当時、県内の自宅療養者の死亡が全国に先駆けて相次いで報道され、大野元裕知事が記者会見で何度も「埼玉県の脆弱な医療体制」と発言するなど、患者の受け入れ態勢には課題が多かった。

 県が病床を確保したとする病院にも「スタッフが足りない」、「病室の陰圧工事が終了していない」と受け入れを断られたという。初期の入院調整について星氏は「個人的な人脈に頼らざるを得ませんでした」と振り返った。

「まさに綱渡りの状態」

 宿泊療養施設で患者を診た「ひかりクリニック」(さいたま市大宮区)の大谷洋一理事長は、施設内に血中酸素濃度が低い入院待機の患者が常に5、6人いた第5波に触れ、「療養者にとっても看護師にとっても非常に辛(つら)く、まさに綱渡りの状態だった」と記した。

 宿泊療養の仕組みについて、「感染拡大防止の観点から有意義かつ有効な仕組み」としつつ、「医療崩壊したときのしわ寄せは、緩衝帯であるホテル療養に集中しやすいことも明らかになりました」とした。

 記録集では介護老人保健施設でのクラスター(感染者集団)にも言及。発生から3週間で72人が感染し介護現場が機能不全に陥った施設では、家族がベランダ越しに入所者と最期の面会をしたことなどを回顧した。「(感染症法上の)分類が(5類に)変わっても、高齢者介護施設が置かれ続けている厳しい状況は変わらないことも多い」と、感染症に弱い高齢者対応の難しさを指摘した。

 記録集は今後、県医師会のホームページに掲載予定という。問い合わせは県医師会(048・824・2611)。

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