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金属音、粉じん、煙… 近隣住民悩む規制なきスクラップヤード


 鉄くずなど再生資源物を屋外で保管する「スクラップヤード」を巡り、さいたま市内では騒音などに悩む住民が数年~15年にも及ぶ事業者との交渉を余儀なくされている。市は2023年12月にヤード設置を許可制とする条例を制定したが、既存のヤードは規制の対象外。「一生、この騒音の中で生活しないといけないのか」と不安を募らせる住民もおり、対策の不十分さを訴えている。【鷲頭彰子】

 秋晴れの23年10月、中国籍の従業員が多いという岩槻区金重地区のヤードで消防訓練が実施された。鉄くずなどから出火した想定で、岩槻消防署の消防士が119番のかけ方などを指導。従業員は、たどたどしい日本語で現場住所や火災状況などを説明していた。

 訓練には、初めて住民も招かれた。参加した女性は、「資源物」が高さ5メートル以上の囲いよりも高く積み上がった12年の写真を記者に見せながら、「この間まであった鉄くずなどは今日は何もない。これまでで一番片付いている」と苦笑いした。

住民、改善要求重ね

 このヤードが設置されたのは15年以上前。土日や祝日も構わず持ち込まれるスクラップの分別作業や重機が金属を潰す音、その振動、粉じん、煙などに住民は悩まされてきた。

 再生資源物であるスクラップは有価物として取引され、廃棄物処理法の規制対象外。直接規制する法令がなく、12年に初めて住民から相談を受けた市環境対策課は騒音調査をしたものの、対策は業者への注意などにとどまっていた。

 住民は09年に事業者と協定を結び、操業は日曜祝日を除く午前8時から午後6時まで▽それ以外で操業する場合は事前に住民に知らせる――などと約束した。だが、時間がたつにつれ協定はうやむやに。苦情の電話をしても中国籍の従業員とは日本語での会話が難しく、改善されないことが続いたという。

 22、23年には立て続けに火災も発生。適正に処理されていないガスボンベが資源物の中に混じり、重機で分別する際に出火したことなどが原因とみられ、行政も調査や指導に動いた。

 相次ぐ火災に安全性への懸念が高まり、住民側は業者に対し改善を強く要求。23年11月末に開かれた話し合いで、事業者側は地権者との土地賃貸借契約が切れる25年1月までに引き払うことを約束した。

 会合後、なぜここまでのトラブルになったのかという記者の質問に、「友興金属」の中島文夫社長は「場所が合っていなかった」と住宅地での操業を問題点に挙げた。「(資源物を持ち込むのが)日曜日のお客さんもいる。受け入れたい気持ちはある。鉄と鉄なので、(住宅地は)音に敏感で、それが原因でこじれてしまった」

 一方、金重地区から数キロ離れた掛地区にも、3年ほど前にヤードが設置された。水色に塗られた高さ約8メートルの壁で囲われている。大型車が出入りするため、ヤード周辺道路のアスファルトがえぐれて水がたまり、騒音が響く。

 数メートル離れた場所に住む住民は、家族が騒音で体調を崩したと訴える。住民らは3年がかりで、業者と操業時間や排水の適正処理などについて覚書を交わしたが、「ちゃんと守ってもらえるか」と不安そうに話す。

さいたま市条例、既存は対象外

 23年12月定例市議会で制定されたばかりの条例は、ヤードの新規開設について、民家から100メートル離すことなどを定めた。だが、既存施設には適用されない。市は「騒音などには施行規則で騒音規制法や振動規制法に準じた基準を設け、生活環境の保全に努める。それらを基に指導もできる」と説明するが、住民側には不信感が残る。「一度ヤードが作られたらなくすことはできない。何とかこれまでの平穏な生活を取り戻したい」と話している。

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