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石川県、災害死者名を公表できず マンパワー不足 能登半島地震


 能登半島地震で100人超が犠牲となった石川県は死者の人数を公表する一方、7日現在、氏名は一人も明らかにしていない。県は遺族の同意を条件に災害の死者を原則公表する基準を定めているが、手が回らず、公表の見通しも立っていないという。大規模災害時に懸念される行政職員のマンパワー不足が浮き彫りになっている。

 「まずは助かる命を優先したいので、安否不明者の情報を収集している。死者は人数を出すので精いっぱいだ」。南良一・県危機対策課長は現状を訴える。

 安否不明者の氏名については、内閣府が2023年3月、公表指針をまとめた。速やかな救助活動のため、家族の同意がなくても原則公表できると明記した。

 これまでは自治体に判断が委ねられ、個人情報保護の観点から公表しないケースもあった。しかし、静岡県熱海市の土石流災害(21年)で、公表によって捜索の対象者や場所の絞り込みにつながる効果があった。

 石川県も災害発生後、おおむね48時間をめどに公表するとの基準を定め、今回の地震では発生から約55時間後の3日午後11時ごろから、氏名、住所、性別、年齢を順次ホームページなどで公表している。

 一方、死者の氏名については公表に関する全国的な指針がなく、各都道府県の判断に委ねられている。

 内閣府は指針を示さない理由を「安否不明者と違って、死者の氏名の公表は人命救助の効率化にはつながらず、必要性を見いだしづらい」とする。

 石川県はDV(ドメスティックバイオレンス)の被害者ら住民基本台帳の閲覧制限のある人を除き、遺族の同意があれば原則公表する。しかし、氏名の公表には市町村の協力が必要で、被害の大きかった輪島市や珠洲(すず)市では職員も被災するなど、対応可能な要員が限られているという。南課長は「今はそこに人手を割いてもらうわけにはいかないし、(死者の)親族も避難していてどこにいるかも分からない」と話す。6日には穴水町が報道各社の取材に、土砂崩れに巻き込まれて死亡した5人の氏名を明らかにしたが、県は「公式発表ではない」とした。

 死者名の公表を巡っては自体間で対応にばらつきがある。

 神奈川県は遺族の同意がなくても死者名を公表するスタンスだ。県危機管理防災課によると、「氏名掲載の要否を判断するのは報道機関であって、行政は把握した情報を速やかに出すべきだ」という黒岩祐治知事の意向が大きいという。

 兵庫県は安否不明者として公表した人の死亡が確認された場合、遺族の同意なしに公表する。その他の死者では遺族の同意を必要とするが、南海トラフ巨大地震などの大規模災害時は同意の有無に関わらず公表する場合があるとしている。担当者は「西日本豪雨などでも死者名を公表したが、問題は生じなかった」と話した。

 遺族の同意を要件としている長崎県は、20年7月の九州豪雨で3人が死亡した際、いずれも同意が得られず、氏名公表を見送った。

 16年に熊本地震が起きた熊本県は、同意があるか公益上の必要性がある場合は原則公表。公表しない場合でも、年代、性別、住所を公表する運用だ。被害状況を伝え、防災に役立てるためだという。

 全国知事会は21年にまとめたガイドラインで、死者名の公表について、「国民の知る権利に応え、災害の教訓をリアルに後世に残すことにつながるとの意見もある」としている。【岩本一希、古川幸奈、東久保逸夫、野田樹】

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