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「私も依存症なんです」薬物で逮捕、高知東生さんを再起させた出会い


 夏場は、若者が違法な薬物に手を出す機会が多い時期とされる。俳優の高知東生(たかち・のぼる)さん(58)は約7年前、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され、有罪判決を受けた。現在、自らの経験を語ることで薬物依存症の人たちの役に立とうと、講演活動を続けている。自身も人から手を差し伸べられ、更生を誓った。「全身に電流が走った」という、どん底からはい上がるきっかけになった出会いとは。

マトリに「ありがとう」

 「来てくれて、ありがとうございます」。ホテルの部屋に踏み込んできた「マトリ(厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部)」の捜査員を前に、高知さんはそう漏らしたという。「人生が終わった」という絶望感とともに湧き上がってきた「これで(薬物を)やめられる」という安堵(あんど)感からだった。ストレス発散から始めた薬物だったが、最後は自分の手では逃れられないほど依存していた。

 高知県出身。最初に薬物に手を出したのは上京後、20代の頃だった。「東京都内のディスコで覚醒剤を使った」という。仕事も順調で当時はその場限りで終わっていた。だが、50歳前後になって将来について考え、エステ関係の事業へ参入したことが、再び薬物に手を染めるきっかけになった。大手エステ会社との提携が白紙になるなどトラブルが続き、次第にストレスがたまっていったという。薬物の使用経験がある女性と知り合い、過去に使用した際の話で盛り上がった。前々からの知人に連絡を取り、覚醒剤を入手。女性と共に常習的に使用するようになった。

 初めは「ストレス発散のため」と軽い気持ちだったが、徐々に使用回数は増加。薬物という家族にも言えない秘密を共有していることで、女性を「自分を一番分かってくれる人」と勘違いしたという。「今考えれば、薬物を使ってまともな話ができるわけがない」と冷静に振り返る。

 お互いにストレスの波が異なり、片方がやめようと言うと、相手が止める悪循環に陥った。「薬物の影響で一時的に気が大きくなるが、やがて『女性に密告されるのでは』と怖くなり、それがまたストレスになった」と悔いる。2016年6月下旬、女性と2人でいたホテルで現行犯逮捕された。

 16年9月、覚醒剤取締法違反(使用、所持)罪で懲役2年・執行猶予4年の有罪判決を受けた。世間の大バッシングを浴び「命を絶ったほうが楽になるのではないか」と悩んだ。自宅マンションから飛び降りようと考えたこともあったが、踏み切れなかったという。死ぬこともできず、孤独の中で悩み続けていたが、19年に転機が訪れた。

「全身に電流」初対面で7時間話し込み

 「一度会いませんか」。自身のツイッター(現X)アカウントに届いた「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表からのメッセージだった。最初は断っていたが、繰り返し届く誘いに根負けし、19年2月に会うことになった。

  田中さんは、あいさつもそこそこに「私も(ギャンブルなどの)依存症なんです」と切り出したという。初対面の相手が過去をさらけ出し話してくれたことに、「全身に電流が走った思いだった」と語る。高知さんも過去を打ち明けたくなり、気がつくと7時間話し続けていた。話し終わると、田中さんは「私たちと依存症に関して啓発活動をしましょう。今まで苦しかった高知さんの恥だと思う過去を価値に変えましょう」と提案。「自分の中で人生を再建する道筋が見えた」(高知さん)という。講演会の仕事などを手配してもらい、自らの生きる意味を見いだした。

「正直にSOSを」

 高知さんは19年、依存症の正しい知識などを伝える「NPO法人アルコール薬物問題全国市民協会」が認定する依存症予防教育アドバイザー資格を取得し、全国で講演を行っている。薬物などの依存症で苦しむ当事者や家族には「周囲に助けを求めて」と呼びかける。自らも自助グループと知り合ったことで「薬物と距離を置く」と決意できたからだ。

 「自助グループや家族会、依存症の専門家がいる病院につながってほしい。そこで正直にSOSを発信してほしい」と力を込める。【川原聖史】

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