日本製鉄東日本製鉄所君津地区（千葉県君津市）の工場敷地外に基準値を超える有害物質のシアンが流出した問題で、千葉県は8日、日本製鉄に水質汚濁防止法の順守徹底などを勧告する行政指導をした。また、同社が2022年に示した対策についての評価書も公表した。
評価書は、同社の問題点として、有害物質に関するずさんなリスク管理など不十分な環境保全対策▽コンプライアンス意識の欠如と法、協定の認識不足▽組織内外の連携不足と環境マネジメントシステムの機能不全――を指摘。また、有識者会議で同社が千葉海上保安部からの捜査を受けていることを理由に原因の核心について明らかにしなかった姿勢について、「極めて遺憾」と非難した。
同地区では、22年6～7月に着色水やシアンの流出が発生。その後、同社が過去のシアン流出を把握しながら公表しなかった問題や、水質検査結果の不適切な取り扱いが発覚した。こうした問題や、再発防止策提出後の同11月にも排水からシアンが検出されたことを受け、県は23年1月から有識者会議で検証を続けてきた。
熊谷俊人知事は「不祥事が相次いだことは大変遺憾。しっかりと受け止め、形骸化しないように社をあげて対策を実施し、早期に県民の信頼を回復してほしい」と述べた。指導文書を受け取った同所の野見山裕治所長は「二度とこうした事案を起こさないように引き続き万全を尽くしていく」と話した。【長沼辰哉】
