将棋の藤井聡太名人（21）は4日、大阪市福島区の関西将棋会館で指した第71期王座戦（日本経済新聞社主催）挑戦者決定戦で豊島将之九段（33）を159手で破り、永瀬拓矢王座（30）への挑戦を決めた。藤井名人は防衛戦が進行中の王位を含め七つのタイトルを持っており、将棋界初の全8冠制覇に挑む。注目の王座戦五番勝負は31日、神奈川県秦野市で開幕する。
藤井―豊島戦は振り駒で先手番を握った藤井名人が得意の角換わり戦を目指したのに対し、豊島九段が避けて相居飛車の力将棋に持ち込んだ。終盤まで互角の戦いが続いたが、夜戦に入って形勢がめまぐるしく入れ替わる大熱戦を藤井名人が制した。王座戦6回目の参加で初めて決定戦に進み、挑戦権を獲得した。
4連覇中の永瀬王座は、史上3人目となる名誉王座の永世称号（連続5期または通算10期）をかけた戦いになる。両者によるタイトル戦は2022年の第93期棋聖戦以来2回目（藤井棋聖が3勝1敗で防衛）。対戦成績は、藤井名人が11勝5敗とリードしているが、直近8局では4勝4敗の五分。練習将棋もよく指す気心の知れた間柄で、五番勝負は白熱した戦いになりそうだ。藤井名人は8冠挑戦について「王位戦がシリーズ中なので直ちに意識することはないが、貴重な機会なのでしっかり全力を尽くしたい」と抱負を語った。
藤井名人は王将、竜王、王位、叡王、棋王、棋聖のタイトルを併せ持ち、タイトル獲得数は計16期。タイトル戦での敗退は一度もなく、今年に入って棋王と名人を相次いで獲得、羽生善治九段（52）と並ぶ史上2人目の7冠達成者となった。【新土居仁昌】
